原子力産業新聞

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美浜でエネルギー・キャンプ 高校生が企画

08 Apr 2024

石井敬之

各テーブルで真剣に議論する参加者たち

福井県美浜町で3月29~30日、エネルギーへの理解を深める「美浜エネルギー・キャンプ」が開催され、電力生産地と電力消費地の中学生、高校生、高専生、大学生など20名が参加。2日間にわたる様々な体験を通して、エネルギーや電気に対する理解を深めた。

同キャンプは福井南高等学校と美浜町の共催。同校の生徒たちが企画し、島根大学、慶應義塾大学、岐阜工業高等専門学校、兵庫県立舞子高等学校、京都府立桃山高等学校、京都教育大附京都小中学校などから希望者が自主的に参加。美浜町が全面的に協力した。参加者は、美浜町レイクセンターで電池推進船に体験乗船し、関西電力・美浜原子力発電所を見学。さらに同町のエネルギー環境教育体験館「きいぱす」[1]日本で唯一、エネルギー環境教育に特化した体験館で、廃校となった小学校を再利用し、2017年に美浜町営の施設として開館で、日本のエネルギー事情や電源の特徴に加え、実験を通じて、交流/直流、同時同量、長距離送電を可能にする変圧器の仕組みなどを学んだ。また、きいぱすに電気を供給する太陽光、風力、蓄電池を組み合わせたエネルギーシステムも見学。気候に左右される再生可能エネルギーの通年での稼働状況などを通し、エネルギーをめぐるさまざまな状況を「体感」した。

2日間にわたって行われた同キャンプは、生徒たちを主体に進められ、周囲の大人はサポートに徹していた。また、多くの時間を、参加者同士の意見交換に費やしていたことも同キャンプの特徴と言える。最後の意見交換では、幅広い世代にエネルギー問題を理解してもらうにはどうすればよいか議論。「今回のような交流会イベントを定期的に開催し、自分から話し合う機会を設ける」、「発電所を訪問して体験することで、理解度が飛躍的に高まる」、「楽しい旅行のような交流会イベントを企画し、幅広い世代に参加してもらう」、「移動式きいぱすのようなもので、各地を回る」、「電気を全く使わないNO電気デイを過ごしてみる」、「子供がさまざまな体験を通じて学び、そこから親を巻き込んでいく」など様々なアイデアが出た。

2日間の日程を参加者たちは「エネルギー問題について自分で考え、また他者の発表を聞く事で自分が思いつかない意見を知り、大変ためになった」、「いろんな地域の人たちが、それぞれ違う考えを持っていて、それをお互いに受け入れて、そのうえで議論し合う、というのが新鮮で面白かった」、「美浜町では原発が地域となじんでいる、生活の一部になっていると感じた」などと語り、今後も引き続きエネルギー問題に取り組む考えを示しながら、互いに再会を期していた。

美浜町エネルギー政策課・上野和行課長は、「きいぱすは『エネルギーを通じて主体的に考える』をテーマに掲げた施設。子供たちがそれを体現し、主体的にエネルギー問題を議論する姿に感銘を受けた。原子力発電所の見学と、きいぱすでの実験を通してエネルギーへの理解を深めていただけたようで、町が運営する施設としても自信につながった。皆さんの知的好奇心はまだまだ満足されていないと思うので、これからも学び続けてほしい。美浜町としても応援していきたい」と語った。

きいぱす・橋場隆館長は、「豊かな時代はエネルギー問題を意識しなくてんだしかし今は、エネルギー問題を知らないといけない厳しい時代になっている。参加者の皆さんには、今回得たものを周囲の方に話して、あらゆる世代に広げてほしい」と期待を込めた。

脚注

脚注
1 日本で唯一、エネルギー環境教育に特化した体験館で、廃校となった小学校を再利用し、2017年に美浜町営の施設として開館

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