原子力委、大学教育に関するヒアリングで課題とグッドプラクティスを整理
17 Mar 2020
原子力委員会は3月17日の定例会で、人材育成に関する見解を受け実施した原子力教育に携わる大学・大学院教員からのヒアリングの結果をまとめた。
ヒアリングは、2019年12月より、北海道大学、東北大学、東京大学、東京工業大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学に対し順次行われ、17日の会合では、これらを通じて拾い上げられた課題とグッドプラクティスを例示。課題としては、学内設備の老朽化や技術職員の定員削減、学外施設の停止・廃止により、実習や実験が困難となっていることなどがあげられた。例えば、臨界実験装置を用いた原子炉基礎演習・実験を行っている京都大学では、新規制基準対応に伴う停止期間で落ち込みを見せた受講者数が回復しつつあるとする一方、将来的な学内施設・装置の維持に関して「できる限り修理・補修しているが抜本的な解決には至っていない」と、老朽化による教育研究環境の悪化を懸念している。
一方、グッドプラクティスとしては、オンライン講座の活用などがあげられた。例えば、北海道大学では、ウェブサイト公開の講義録「オープン教材」の作成や、テレビ会議システムで道内の大学を結んだ放射線に関する教養科目開設など、通信ネットワークを活用した取組に力を入れている。
原子力委員会では、海外大学の原子力教育についても随時ヒアリングを実施しており、今回、欧米大学のグッドプラクティスも合わせて例示。カナダ・マクマスター大学に見られる学生による授業評価とそれを受けた講義内容の見直しなどがあげられ、岡芳明委員長は「競争のシステムが取り入れられている」と、日本との違いを強調した。
ヒアリング結果については、日本原子力学会や「原子力人材育成ネットワーク」を通じて他大学への水平展開が図られる見通し。
原子力委員会は、今夏発表予定の2019年度版原子力白書で、「人材育成を含む原子力利用の基盤的強化」を特集テーマとして取り上げることとしている。