米WE社 ポーランドにおけるAP1000導入の経済的メリットを強調
24 Apr 2024
PwC社の報告書について駐ポーランド米大使館で記者会見を開催。大使とWE社社長が出席。©U.S. Embassy Warsaw
米ウェスチングハウス(WE)社は4月9日、ポーランドにおけるWE社製AP1000×6基の建設プロジェクトが、ポーランドにGDPで1,183億ズロチ(約4.55兆円)以上の貢献をし、運転フェーズに入ると年間380億ズロチ(約1.46兆円)のGDPを生み出すとする調査結果を明らかにした。
この調査結果は、コンサルティングファームである英プライスウォーターハウスクーパース(PwC)社が、WE社とその所有者であるブルックフィールド社とカメコ社向けに作成した「ポーランドにおけるAP1000プロジェクトの経済的影響」と題する報告書によるもの。
この調査結果では、AP1000×6基の20年間(2022~2041年)にわたる製造・エンジニアリング・建設段階で、ポーランドのGDPに1,183億ズロチ(約4.55兆円)以上の増加を与え、204,990人・年以上の雇用を生み出すと予測している。税収は509億ズロチ(約1.96兆円)増となる。発電所の運転の段階では、年間で少なくとも380億ズロチ(約1.46兆円)のGDPを創出し、16,310人の雇用を支え、税収は164億ズロチ(約6,310億円)増となる。なお、運転期間は少なくとも60年間としている。
ポーランドのサプライチェーンが海外市場においてAP1000導入を支援した場合、1基あたり19億ズロチ(約731億円)のGDPを追加的にもたらすという。欧州でマイクロ炉のeVinciや小型モジュール炉(SMR)のAP300が導入されれば、サプライチェーンが活躍する機会はさらに増えると予想される。
また、AP1000×6基の導入により、ポーランドの電力部門のCO2排出量は39%削減され、1,300万もの世帯にカーボンフリーの電力を供給する。また、トレーニングにより高スキルの労働力と地域の高等教育機関との連携を生み出し、運転が開始されれば、地域で2,400人以上のトレーニングを実施する。
またWE社は同時に、ルビアトボ-コパリノ・サイトやその他の欧州のプロジェクト支援のために選定したポーランドのサプライヤー7社:Polimex Mostastal Siedlce、Baltic Operator (Grupa Przemyslowa Baltic)、Mostastal Kielce、Mostastal Krakow、ZKS Ferrum、Famak、Energomontaz-Polnoc Gdyniaを発表した。
WE社傘下のWEエナジー・システムズ社のD.ダーハム社長は、「ポーランドでのAP1000導入は、エネルギー安全保障における米国とポーランドの100年間のパートナーシップを意味する。この調査は、ポーランドと経験豊富なサプライチェーンに対してAP1000がもたらす長期的かつ重要な経済的、人的資本、気候変動対策へのメリットをさらに強調する。サプライヤー7社の協力は、明確なビジョンを持ってプロジェクトを推進する上で極めて重要である」と指摘した。
ポーランド政府は2020年10月に第3世代あるいは第3世代+(プラス)のPWR×6基、総出力600万~900万kWの原子力発電導入を定めた原子力開発計画(PPEJ)を閣議決定、2022年11月、同国初の原子力発電所の採用炉型としてAP1000を選定、最初の3基の建設を発表した。同国北部ポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ–コパリノ・サイトに建設する計画だ。国営の特別目的会社(SPV)でポーランド初の原子力発電所の建設および運転を担当するPEJ社は、2023年5月にWE社、米ベクテル社の企業連合と3社間協力の主要原則で合意、9月には、エンジニアリング・サービス契約を締結した。ポーランドの気候環境省は同年7月、PEJ社に対し、AP1000建設計画に原則決定(DIP)を発給している。
PEJ社は気候環境省に提出した地質調査計画の承認を受け、4月16日、ルビアトボ-コパリノ・サイトにおいて詳細な地質調査を5月に開始することを明らかにした。地質調査はベクテル社が実施し、面積約30 haのサイトに深さ約20~210m、約220か所の調査ポイントを設置する。地質調査結果はサイトの地質学的、工学的、水文地質学的な状況をより詳細にし、国家原子力機関(PAA)が発給する建設許可の取得に必要な、サイト評価報告書に反映される。調査の第一段階は年内に完了予定であり、調査結果は現在進行中の発電所の設計/エンジニアリング作業にも利用される。PEJ社は2033年に初号機の営業運転開始を目指している。