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米国 パリセード再稼働に向けた準備が加速

27 May 2024

桜井久子

再稼働に向けて、原子炉運転シミュレーターで訓練を行うパリセード発電所の運転員
©Holtec International

米ホルテック・インターナショナル社は514日、ミシガン州にある閉鎖済みのパリセード原子力発電所の再稼働に向けた準備の進捗について公表した。同発電所では人材の確保、トレーニングプログラムの活性化、多数のプラントシステムおよびコンポーネントの改修・調達、規制書類の提出、資金調達など、再稼働にむけた準備が加速している。

パリセード発電所では再稼働に向けて閉鎖前の従業員の再雇用も含め、現在360名以上の従業員が勤務しており、再稼働計画が始まって以来、150名近く増員している。原子炉運転シミュレーターの再設定と運転員訓練プログラムを再開。プラントの長期運転時の安全確保のため種々の機器の大規模な改修や交換工事、新燃料の発注、長寿命部品の調達などが進行中である。規制手続きについては、再稼働に向けて米原子力規制委員会(NRC)への複数の許認可申請を行うとともに、規制手続きの一環である公開ミーティングにも参加している。同発電所が運転を再開すると、閉鎖された後に営業運転に復帰する米国初の原子力発電所となる。

パリセード発電所の再稼働方針については、ミシガン州のG.ホイットマー知事が20229月に支持を表明。2023年7月には、同発電所の再稼働に1.5億ドル(約235.1億円)の支援を盛り込んだ2024会計年度の州政府予算法案に署名している。20244月には、米エネルギー省(DOE)が融資プログラム局(LPO)を通じて、同発電所の再稼働に向けた融資保証として15.2億ドル(約2,382.3億円)を上限とする条件付きの提供を発表。ホルテック社は、NRCの運転認可を条件として、少なくとも2051年まで運転できるようプラントの改良を実施する計画だ。また、同社は今月初め、プラント改良と保守専業の子会社の設立を発表。世界で稼働する原子力発電所を対象に、AI活用の予防保全やロボット主導の放射線量被ばく低減などの最先端技術の導入を行う。その最初のプロジェクトが、パリセード発電所の改良作業となる。

なお、ホルテック社は、同社製小型モジュール炉「SMR-300」(PWR30kWe)を2基、パリセード発電所サイトに建設する計画も進めている。同2基が稼働すれば、ミシガン州の無炭素電源の設備容量はほぼ倍増となる。2026年の建設許可申請を予定している。

パリセード発電所(PWR85.7kWe)は、1971年に営業運転を開始し、20225月に永久閉鎖となった。翌6月、同発電所は所有者・運転者のエンタジー社から、廃止措置を実施するため、ホルテック社に売却された。

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