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スウェーデン 新設と運転期間延長の計画に進展

19 Jun 2024

桜井久子

リングハルス発電所 ©Vattenfall

スウェーデンの国営電力会社、バッテンフォールは612日、ヴェーロー半島にあるリングハルス原子力発電所(PWR110kWe級×2基)の西側に建設を計画している小型モジュール炉(SMR)について、供給候補6社から英国のロールス・ロイスSMR社と米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社の2社に絞り込んだことを明らかにした

今後、同2社の提案を詳細に分析した上で、SMR建設に係るスケジュールを共同して策定していくとしている。

並行して、バッテンフォールは大型原子炉の建設条件の検討を続けており、大型原子炉の供給者として、米国のウェスティングハウス(WE)社、フランス電力(EDF)、韓国水力・原子力会社(KHNP)を挙げている。

バッテンフォールのD.コムステッド新原子力発電部門長は、「炉型は未定だが、SMRまたは大型炉に係わらず、将来の投資決定には国との合理的なリスク分担モデルが必要になる。新規建設の資金調達コストを削減し、電力需要者が負担する発電コストを合理的にする必要がある」と指摘した。

炉型の選択に係わらず、建設の最終投資判断(FID)は、必要な許認可をすべて取得した後に行い、早ければ2030年代前半に新規炉の運転を開始したい考えだ。

なお、バッテンフォールは617日、同社を含むフォルスマルクとリングハルスの各原子力発電所の所有者が既存炉の運転期間を60年から80年に延長する方針を決定したと発表した。運転期間延長により、2060年代までカーボンフリーの電力供給が可能になり、スウェーデンの消費者への効率的な電力供給だけでなく、エネルギー移行の面でも有利になるとしている。

同社のT.ウォールボルグ北欧地域担当上級副社長は、「原子力は、スウェーデンのカーボンフリーの電力生産において、今後何十年にもわたって重要な役割を果たすため、新設だけでなく既存炉への投資も極めて重要。過去に大規模なバックフィット作業を実施しており、運転期間の20年延長に問題はない」と運転期間延長の意義を強調した。

フォルスマルク発電所13号機(BWR、各110120kWe級)とリングハルス発電所34号機の運転期間の20年延長により、合計8,000kWh以上の電力供給が可能であり、現在のスウェーデンの電力消費量のほぼ6年分に相当するという。

この方針の決定に続き、より詳細なコスト計算やリスク分析を含む詳細な調査段階を経て、最終的な投資決定(FID)が行われる。必要な投資のほとんどは2030年代に行われる予定だ。

運転期間延長には、システムや機器の交換や改修に推定400億~500億スウェーデン・クローナ(約6,047億~7,560億円)の投資を予想。技術的なニーズには、タービン、発電機などの機器の保守、改修、交換、制御・監視システムの改良のほか、電力網などのインフラへの投資も必要であるという。

スウェーデンでは2022年9月に総選挙が行われ、翌10月、40年ぶりに原子力を全面的に推進する中道右派連合の現政権が新たに誕生、2023年11月には、原子力発電の大規模な拡大をめざすロードマップを発表した。これには、カーボンフリーの電力を競争力のある価格で安定的に確保し、社会の電化にともない総発電量を25年以内に倍増させるため、2035年までに少なくとも大型原子炉2基分の原子力発電設備を完成させ、さらに2045年までに大型炉で最大10基分相当の原子力発電設備の追加などが盛り込まれている。また、今年1月には、環境法の一部改正法が発効、新たなサイトでの原子炉の建設禁止や国内で同時に運転できる原子炉基数を10基までとする制限事項が撤廃されるなど、原子力推進に向けた環境整備が着々と進められている。

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