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エストニア 議会が原子力導入支援を決議

20 Jun 2024

桜井久子

© Riigikogu

エストニア議会(リーギコグ)は612日、エストニアにおける原子力導入支援に関する決議を採択した。今後、原子力安全法の起草、必要に応じて既存の法律の改正・補足、原子力の規制組織の設立、および専門家の育成を実施する。

本決議は、エストニアにおける原子力導入を許可するか否かに関する基本的な決定。エストニアに原子力発電所を建設する許可を与えるものではない。決議案には41名の議員が賛成、25名が反対、2名が棄権した。

リーギコグの55名の議員は59日、同国における原子力導入と適切な法的・規制的枠組みの創設の準備を開始することを可能にする決議案を提出した。エストニア政府の原子力作業部会(代表:A.トゥーミング気候省次官)が2021年から2023年にかけて作業し取りまとめた、エストニアに原子力導入は可能であると結論づけた報告書に基づいている。

決議は、2035年までのエネルギー部門国家開発計画において、気候中立のエネルギーへの移行期におけるエネルギー供給の安全性を確保するため、原子力導入による影響に対処することや、規制の枠組みの確立にあたっては、国家の安全保障、資金調達、プラントの所有形態に関するリスクを徹底的に評価することを求めている。

また、決議の説明覚書では、エストニアにおける原子力導入の利点として、再生可能エネルギーの発電能力による変動の均衡、気候目標の達成への貢献、長期的に安定して安価な電力価格の維持、研究開発の促進、経済的効果、地元の雇用創出を挙げている。

原子力作業部会の報告書は、原子力発電所の建設資金を民間部門から調達し、原子力利用を可能にする枠組みを構築するための国家予算の費用は、原子力計画段階から発電開始までの911年の期間で約7,300万ユーロ(約123.9億円)と試算。原子力導入は主に税収の増加や経済活動の活性化により国家に安定した歳入をもたらすと評価している。

エストニアの現在の電源は、化石燃料、特にオイルシェール燃料が大半を占めている。エストニアは、2050年までに排出量実質ゼロを達成することを掲げており、国内のオイルシェールの段階的廃止を開始する2035年までにエネルギー・ミックスを多様化するため、信頼性が高く低炭素な電源の選択肢として原子力発電に注目している。原子力作業部会の報告書では、電気出力40kW以下のSMRの導入が適切とし、小規模なバルト海電力市場、再生可能エネルギー、供給目標、欧州の水素市場の発展の可能性を考慮し、水素製造が可能なSMR34基または合計120kWまでの導入可能性を検討。炉型の選択にあたっては稼働実績と燃料供給の安定性を重視している。

なお、20232月、エストニアの新興エネルギー企業のフェルミ・エネルギア社は、GE日立・ニュクリアエナジー社のSMRBWRX-300」を2030年代初頭までに建設すると発表した

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