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米上院 先進炉の導入促進法案を可決

24 Jun 2024

桜井久子

©Architect of the Capitol

米上院は618日、先進炉の導入促進法案を可決した。大統領の署名により成立する。

本法案は、クリーンエネルギーの多用途かつ先進的な原子力展開の加速化法(Accelerating Deployment of Versatile, Advanced Nuclear for Clean Energy=ADVANCE法)と称し、火災補助金および安全法(S.870)の一部を構成。上院の超党派により起草され、882の圧倒的多数で上院を通過した。なお、下院は58日に39313の票決により可決している。

ADVANCE法では、以下を定める。

  • 米原子力規制委員会(NRC)に先進炉の規制を策定するための国際的なフォーラムを主導する権限を与え、エネルギー省(DOE)には核不拡散の強固な基準を維持しながら米技術の国際市場への輸出承認のプロセス改善を指示し、原子力分野における米国のリーダーシップを促進する。

  • 先進炉の許認可を申請する企業の規制コストを削減し、次世代炉展開を奨励する賞を創設。NRCに対しては、利用停止中や閉鎖済みの火力発電所からマイクロ炉などへのタイムリーな許認可発給を可能にする道筋を示すよう要請し、新原子力技術の開発と展開を支援する。

  • 既存炉および次世代炉の安全性と競争力を向上させる事故耐性燃料および先進燃料の認定と許認可発給の能力の強化とともに、より良く、速く、安く、スマートに原子炉を建設するため先進的な製造技術の評価をNRCに指示し、米国の核燃料サイクルおよびサプライチェーンを強化する

  • NRCの近代化、人員配置の問題に対処する取組みを支援し、先進炉の許認可申請の効率的な安全審査のため、優秀な人材の雇用と維持のツールをNRC委員長に提供し、NRCの効率性を向上させる。

法案を作成した上院環境公共事業(EPW)委員会委員長のT.カーパー上院議員(民主党)は、「気候と米国のエネルギー安全保障にとって大きな勝利。長年、米国最大の無炭素電源である原子力の普及加速のためこの法案に取り組んできた。ADVANCE法は、NRCによる重要な安全使命の維持とともに先進技術の効率的審査を促進し、今後数十年に次世代炉を安全かつ成功裡に展開するための礎となる」と強調した。

同じく法案作成に携わったEPW委員会上級委員のS.カピト上院議員(共和党)は「この超党派法案は、より多くの革新と原子力技術への投資を奨励するもの。NRCにその重要な規制上の使命をより効率的に遂行するよう指示し、将来の原子力プロジェクトのため従来型の発電施設の再開発を支援する」と指摘した。S.ホワイトハウス上院議員(民主党)は「ADVANCE法は原子力分野の労働力を強化し、規制プロセスの障壁を低くすることで先進炉の展開と石炭火力から原子力への移行を支援するもの」と述べ、米国の長年にわたる世界的リーダーシップの強化を目指す超党派による取組みの成功を称えた。

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