新型炉MONARK カナダ経済を押し上げる可能性
03 Jul 2024
MONARKのイメージ図 ©AtkinsRéalis
カナダのアトキンス・リアリス社は6月21日、カナダ型加圧重水炉(CANDU炉)の新型炉「MONARK」(100万kWe)×4基構成の原子力発電所が、カナダにプラスの経済効果をもたらし、数千人の雇用を創出する、との調査報告を明らかにした。
アトキンス・リアリス社(AtkinsRéalis、旧名:SNC-ラバリン=SNC-Lavalin)は、ケベック州モントリオール市を本拠地とし、世界各地で様々な産業向けに、エンジニアリング・調達・建設(EPC)事業を展開する。今回、同社の委託により、カナダ大手のリサーチ機関Conference Board of Canadaが実施した調査によると、「MONARK」×4基のプロジェクトが実現すれば、機器製造、エンジニアリング、建設のプロセスで、カナダの国内総生産(GDP)が409億加ドル(約4.8兆円)増加、運転の段階で495億加ドル(約5.8兆円)増加する。合計で計904億加ドル(約10.6兆円)の増加となり、税収は市、州、連邦政府全体で291億加ドル(約3.4兆円)の増加が見込まれるという。また、70年以上の運転期間を通じて、年間3,500人のフルタイム相当の雇用を創出。さらに、「MONARK」の知的財産権は100%カナダが所有しているため、カナダのサプライチェーンは、「MONARK」の海外輸出・建設1基ごとにカナダのGDPに48億加ドル(約5,700億円)の増加とカナダ人2,200人以上の雇用をもたらすと予測している。
「MONARK」は、アトキンス・リアリス社が昨年11月下旬にパリで開催された世界原子力展示会(WNE)で発表した新設計のCANDU炉。CANDU炉では最大出力の第3世代+(プラス)炉に分類され、水素製造やアイソトープ製造が可能だ。
CANDU炉は、連邦政府直轄のカナダ原子力公社(AECL)が主体となり、カナダが独自に開発し実用化した重水炉。カナダの他、アルゼンチン、中国、韓国、ルーマニアで稼働中である。カナダでは現在国内で稼働する19基(50万kW級~90万kW級)すべてでCANDU炉を採用。国内250企業以上、専門的および熟練したスキルを有する76,000人もの従業員を抱える一大サプライチェーンが確立されている。
アトキンス・リアリス社のG.ローズ・カナダ原子力担当副社長は、「オンタリオ州は2050年までに合計1,800万kWeの新規原子力発電の導入を目指しており、CANDU炉のような大型炉は予測される需要に対応するカギとなる」と指摘している。