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スウェーデン SMRの新たな候補サイトを選定

04 Jul 2024

桜井久子

SMR設置予想図 © Instance/MIT

スウェーデンで小型モジュール炉(SMR)の建設を計画するシャーンフル・ネキスト(KNXT)社は6月26日、4~6基のSMRを導入するための新たな候補サイトを発表した

新たな候補サイトは同国南東部のエステルイェータランド県の広大な海岸沿いのエリアに位置し、南スウェーデン全域での脱炭素エネルギー源の拡大を目指す、KNXT社の「Re:Firm South SMR」プログラムの一環である。

KNXT社は、同県バルデマーシュビークのサイト所有者であるLatona Groupと原子力導入に係る調査の独占パートナーシップ契約を締結。今夏以降に完了予定の現在進行中の調査において既に有望な予備的結果が示されたため、両社は今後、共同で自治体、近隣住民に、SMR建設プロジェクトについて周知することとしている。

同サイトの総面積は約1,300 haSMR建設地としてのロケーションおよび冷却条件も最適で、人工知能(AI)データセンターなどのエネルギー集約型産業との共同立地も可能だという。バルデマーシュビークのSMRプロジェクトでは、70年間にわたり年間約500人の地元の雇用創出と年間100~150kWhのクリーンな電力の生産が期待される。なお、昨年のスウェーデンの原子力発電電力量は470kWhだった。

KNXT社は「Re:Firm South SMR」プログラムにおいて、複数のSMRパークを建設することにより、炉型選定、建設、電力購入契約(PPA)、資金調達の面でスケールメリットをねらっている。バルデマーシュビークが同プラグラムの最初の建設サイトに選定された場合、2030年前半に送電を開始したい考えだ。同社は2022年3月、スウェーデン国内で複数の「BWRX-300」(電気出力30万kW)の早期建設を目指し、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と協力覚書を締結している。

KNXT社は、同プログラムのもう一つの候補地として昨年8月、エステルイェータランド県の北側に位置するセーデルマンランド県のニュヒェーピング(Nyköping)自治体にあるスタズビック社の社有地内を選定した。実行可能性調査(FS)の結果は、今年後半にも発表される予定である。

なお、KNXT社は先月、熱供給用SMRの商業化を目的に設立されたフィンランドのスタートアップ企業であるステディ・エナジー(Steady Energy)社と、スウェーデンに地域暖房用のSMRを導入するための戦略的パートナーシップを締結したKNXT社のC.シェランデルCEOは、「ステディ社のSMRを当社の電力供給のポートフォリオに加え、持続可能な暖房ソリューションを必要とする自治体向けに、新たに地域暖房サービスを提供する」と発表している。ステディ社の地域暖房用SMRLDR-50」(LDR=Low-temperature District heating Reactor、熱出力5kW)は低温(約150°C)、低圧(10バール以下)の運転を特徴とし、地下設置も可能。ステディ社は2028年にも「LDR-50」をフィンランドの首都ヘルシンキとクオピオで着工し、2030年までに初号機の営業運転を開始したい考えだ。なお、2025年にはフィンランドのヘルシンキ他2都市でパイロット施設(電気加熱式)を着工する。

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