原子力産業新聞

海外NEWS

加OPGの新たな社債枠組み 新設にも拡大

10 Jul 2024

桜井久子

ダーリントン新・原子力プロジェクトサイト。
後方にダーリントン原子力発電所 ©OPG

カナダ・オンタリオ州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は628日、「サステナブル・ファイナンス・フレームワーク」による初の社債を発行した。今回の起債による調達資金で、新規原子力発電プロジェクトなど、広範なクリーンエネルギープロジェクトに充当する。

社債の発行額は10億加ドル(約1,185億円)。OPG社によるこれまでの発行額は子会社を含めると、30億加ドル(約3,554億円)以上となり、カナダ最大。6月25日に公表された新たな社債枠組みの「サステナブル・ファイナンス・フレームワーク」は、世界的な原子力の役割の再評価により、既存の原子力施設の保守や改修に向けた資金調達を初導入した、2021年策定のグリーンボンド・フレームワークに代わるもの。この新たな社債枠組みは、原子力の新設なども対象とした、より広範なクリーンエネルギープロジェクトへの資金提供だけでなく、先住民のコミュニティや企業が、調達、トレーニング、教育、雇用を通じて、OPG社のプロジェクトなどに参加する機会の創出も目的としている。

「サステナブル・ファイナンス・フレームワーク」には、以下のエネルギー関連のプロジェクトなどが対象に含まれる。

  • 既存の原子力施設の保守や改修に加え、SMR(小型モジュール炉)や大型原子力発電所などの新たな原子力プロジェクト
  • 水力発電の改修、太陽光、風力、水素製造などの再生可能エネルギープロジェクト
  • エネルギー貯蔵やクリーン燃料貯蔵などのエネルギー効率向上と管理
  • ゼロエミッション車などのクリーン輸送の促進
  • 洪水や異常気象に対する気候適応能力とレジリエンス(回復力)の開発

OPG社のA.シポラ最高財務責任者は、「この新たな社債枠組みは、クリーンエネルギーへの移行を実現するための重要な一歩。これらの目標を資金調達に統合し、電力、アイデア、人材を原動力として持続可能な未来を構築するという当社のコミットメントを果たしていく」と強調した。

OPG社は、ダーリントン新・原子力プロジェクトサイトで、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のSMR「BWRX-300(電気出力30kW)の計4基の建設を計画し、現在、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が同社による初号機の建設許可申請を審査中(既報)。なお、OPG社が所有・運転する、ダーリントン発電所1~4号機(CANDU、各93.4万kWe)では、128億加ドル(約1.5兆円)の改修プロジェクトが半分以上を終えており、2026年末までに完了予定。ピッカリング発電所(B)5~8号機(CANDU、各54万kWe)では、オンタリオ州政府の支援を得て、改修プロジェクトの準備作業が開始されており、2030年代半ばまでに完了予定だ(既報)。

cooperation