韓国 世界初のSMR船舶研究機関を設立
11 Jul 2024
式典に参加した関係者 ©国立木浦大学校
韓国の国立木浦大学校は7月2日、同校の付属研究機関として世界初の小型モジュール炉(SMR)船舶研究所を開所した。同研究所では今後、SMR搭載船舶の開発と商業化のほか、同船舶の専門家を育成するための教育プログラムの開発と運営にも取り組む計画だ。
開所式には、韓国水力・原子力会社(KHNP)、サムスン重工業(SHI)などの原子力・造船関係企業、米国船級協会(ABS)、ロイド船級協会(LR)などの国際船級協会、地方自治体、企業や団体の関係者100名以上が出席。同校のS. ハチョル学長は、「SMR搭載船舶が、将来の海洋産業の中核を担う技術として注目を集めている」と述べ、その要望に積極的に応えるため、今回の研究所設立に至ったと説明。そのうえで、同学長は「今後は国内外の大学、研究機関、造船会社、船級協会などと協力し、ネットワークを構築して、総力をあげて研究を進める」と意気込みを語った。
国連の専門機関である国際海事機関(IMO)が2023年に採択した「2023 IMO GHG削減戦略」によると、国際海運からの温室効果ガス(GHG)排出量を2050年頃までに正味ゼロにすることが目標として掲げられている。海洋環境に対する規制が厳しくなるなか、先進的な新技術を搭載した次世代燃料船(ゼロエミッション船)の開発が求められており、SMRの技術が、今後の海事産業の技術的選択肢の一つとして注目されている。
SMRをめぐっては、最近ではY.ソンニョル大統領が6月に慶州市でのSMRの産業ハブ創設計画を発表したほか、韓国製SMR「i-SMR」の国内外の展開をめざして産官学が連携して開発を進めるなど、SMR開発を積極的に推進している。また、原子力の船舶利用については、サムスン重工業が、デンマークのシーボーグ社製コンパクト熔融塩炉(CMSR)を搭載した海上浮体式原子力発電所の概念設計に協力している。
日本では、IMOのGHG削減戦略に対応するため、大手造船会社と日本海事協会が「一般財団法人次世代環境船舶開発センター」を2020年に設立し、ゼロエミッション船や低・ゼロ炭素燃料などの研究を行っている。なお、2023年5月、浮体式原子力発電所プロジェクトを手掛ける英国のコアパワー社に対し、日本の今治造船(愛媛県今治市)や尾道造船(兵庫県神戸市)など13社が出資したことが明らかになっている。