原子力産業新聞

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規制委 福島第一廃炉作業の改善策を議論

16 Jul 2024

保科俊彦

伴委員 ©NRA

原子力規制委員会は716日、特定原子力施設監視・評価検討会を開き、福島第一原子力発電所における廃炉作業の改善策等について東京電力から報告を受け、今後の取り組みなどをめぐって議論した。

東京電力は福島第一の廃炉作業において、昨年10月から今年4月にかけ、作業員の負傷などを含むトラブルが相次いで発生したことを重視し、5月初旬から作業員全員が参加する形で作業点検を実施67日に完了していた。作業点検件数(再開件数)は995件、うち防護措置の改善件数は675件だった。

先の特定原子力施設の実施計画の審査等に係る技術会合(620日開催)において、作業点検の分析結果について報告した同社は、重大な見直しが必要な事案は確認されなかったが、廃炉の現場は通常炉より複雑な作業が多く、人への依存が高いという面があり、リスクアセスメントの強化やリスクアセスメント教育の強化等の改善策が必要であるとの認識を示していた。その際、規制委から背景要因を深堀りし、さらに踏み込んだ分析が必要との指摘がなされていた。

指摘を踏まえて同社は、共通要因分析を通じて得られた改善策と今後の取り組みについて、この日の検討会で報告した。

要因分析については、昨年10月に発生した増設ALPS配管洗浄作業における身体汚染、今年2月に発生した高温焼却炉建屋からの放射性物質を含む水の漏洩など4つの事案を対象とし、分析を通じて運用・設備・教育の面での改善策を6つに整理した。

また、得られた改善策を現場に活かすための今後の取り組みについて同社は、必要な手順書の見直しや危機意識を高めるための安全教育の強化、CRCondition Report)のさらなる活用、「変化があった場合は必ず立ち止まること」のワンボイスによる浸透をはかる等の取り組みを進める、とした。

報告を受け、規制委からは福島第一の廃炉現場は通常の発電所とは異なることが常態化しており、作業の幅も広いため、CRの活用についても膨大な数になる可能性がある等の指摘がなされ、サイトの状況を考えて効果的に実施する必要があるとの認識が示された。東京電力は、「通常の発電所とは異なることを踏まえ、ひとつひとつトライし、実効性ある改善を図りたい」などと応じた。

検討会を担当する伴信彦委員は「福島第一では膨大な作業が同時並行し、複雑な作業もある。再発防止対策をつくるだけでなく、実効的に機能しているかまで確認する必要がある」とし、今後も検討会で福島第一の作業改善について必要な議論を続けたいとの考えを示した。

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