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米ミシガン大学 石炭火力から原子力への移行をレビュー

23 Jul 2024

桜井久子

米国全土の100万kWe以上の大規模CPPにおけるC2Nの実現可能性を緯度と経度、色分けで分布。赤や暖色は実現可能性が高く、緑から紺色へと移行するにつれ、実現可能性が低くなる。
©University of Michigan

米ミシガン大学の研究者らは79日、米国で稼働中の245基の石炭火力発電所(CPP)を先進的な原子炉に移行する実現可能性を格付けした研究評価を発表した。

この研究は、米エネルギー省(DOE)原子力局の原子力大学プログラムを通じた資金提供によるもの。

米国で大幅な脱炭素化を実現するには、クリーンエネルギーの急速な展開が不可欠。米国では温室効果ガス排出の主要因であるCPPの新たな建設計画はなく、多くの電力会社が今後15年以内にすべてのCPPの廃止を目指している。米国のCPP2022年時点で発電電力量の20%、電力部門のCO2排出量の55%を占める一方、原子力発電はCPPと同様に安定したベースロードの電力供給が可能で、CO2排出量はゼロ。新規で原子力発電所を建設するよりも、既存のCPPを原子力発電所へ移行する方が、送電線や発電システム設備などの既存インフラを活用できるため、時間とコストを節約でき、またCPPの廃止に伴う雇用と税収の減少を防ぐメリットがある。

そのため、ミシガン大学の研究チームは、先進原子力開発のための立地ツール(Siting Tool for Advanced Nuclear DevelopmentSTAND)を用いて、米国における石炭から原子力への移行(C2N)の可能性を体系的に評価した。但し、立地の許認可に必要となる詳細なサイト調査や環境評価は考慮されていない。

同チームは対象となるCPPを、設備容量に基づき、2グループ(100kWe以上とそれ以下)に分類。先進的な原子炉についても、マイクロ炉、中型炉、小型モジュール炉(SMR)などに分類した上でツールを運用した。その結果、設備容量が小さいグループ(100kWe以下)の実現可能性スコアは100点満点中51.52点から84.31点の範囲にあり、中央値は66.53点。設備容量が大きいグループ(100kWe以上)の実現可能性スコアは47.29点から76.92点の範囲にあり、中央値は63.97点だ。なお、エネルギー価格や原子力政策などの地域的特性は、適合性に大きな影響を与えたという。

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