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アルメニア 運転期間延長をロシアが支援

08 Aug 2024

桜井久子

アルメニア原子力発電所  ©Armenian NPP

アルメニアの同国西部のメザモールで唯一稼動するアルメニア2号機(ロシア型PWR=VVER-440、44.8万kW)の運転期間延長に向け、ロシア国営原子力企業ロスアトムは7月29日、同原子炉の金属特性の変化の評価を開始した。

ロスアトムの電力部門のロスアトム・サービス社は、同機の最近の定検時、原子炉本体に原子炉容器と同じ金属で作られた特別なサンプルを特殊な容器に入れて設置。実際の金属特性(強度、脆性)や構造の変化をモニターしていく。2025年から毎年、原子炉本体からサンプルを取出し、ロスアトムの研究所で金属の特性とその構造変化を分析する。得られたデータは、2036年までの更に10年間の運転期間延長の可能性を判断するのに利用される。現在の運転認可期限は2026年9月まで。

2023年12月、ロシアとアルメニアの経済協力に関する政府間委員会の枠組みにおいて、ロスアトム・サービス社とアルメニア原子力発電所は、運転期間の再延長を目的とした作業の実施に関する契約を締結。研究プログラムの策定や、試験サンプルを開発・製造した。

アルメニア原子力発電所は旧ソ連時代に完成した発電所で、1988年にアルメニアで大地震が発生した際、政府は同発電所で当時稼働していた1、2号機を停止した。翌年に1号機(40.8万kWeのVVER-440)を永久閉鎖したものの、2号機はソ連から独立した直後の電力需要を賄うという経済的重要性から、1995年に運転を再開。同炉は国内の総発電量の約4割を賄う重要電源であり、2015年からはロシアからの融資により、運転期間を2026年まで10年延長するためのバックフィット作業が始まった。2号機の原子炉容器の焼きなまし処理(金属の熱処理のひとつ)により容器の金属特性を85%回復させたほか、機器類の点検や取り換え等、安全性を改善する膨大な作業が行われ、2021年11月に完了、2026年までの運転延長を可能にした。

なお、アルメニア政府は8月1日の閣議で、国内での新規原子力発電プラントの建設を管理する非公開株式会社の設置を決定した。新会社は国家予算で運営され、採用炉型の比較調査と実行可能性調査(FS)を実施。採用炉型を提案する他、建設、資金調達、所有および運転に向けた交渉や文書準備を進める。新会社には、採用炉型の選択と建設の準備段階で、年間約8億AMD(約3億円)の予算と、高度な資格(電気、原子核物理学、環境保護、教育、都市計画など)を有する専門家50~60人のスタッフが必要になると想定。新会社の設立や関連人材の採用後1年半~2年以内に、政府に採用炉型の提案を目指している。G.サノシャン地域行政・インフラ相は閣議で、既存の2号機の運転再延長の認可期限である2036年以降、隣接する地域に少なくとも同規模の新設炉が必要になる、と述べた。

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