農水相 ALPS処理水海洋放出に伴う禁輸の「即時撤廃」求める
16 Aug 2024
坂本哲志農林水産相は8月15日の閣議後記者会見で、現在も一部の国・地域で続く日本産農林水産物・食品に係る輸入規制の現状について述べた。同日から17日までを予定する香港訪問に関連し、記者からの質問に答えたもの。
坂本農水相は、16、17日、アジア最大級とされる食の見本市「Food Expo PRO 2024」で日本産農林水産物・食品のトップセールスを行うほか、その輸出拡大に向けて、香港政府関係者との会談や現地食品製造・販売事業者の視察などに臨む。
会見の中で、坂本農水相は、福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水の海洋放出を受け、香港政府が10都県産の水産物の輸入を禁止していることに対し、「いずれも科学的根拠に基づかないものであり、極めて遺憾だ」と強調。一方で、香港について「わが国の農林水産物の重要な輸出先」との認識をあらためて示した上で、今回の訪問で予定する同政府関係者との会談に向け、「規制の即時撤廃を要請する」考えを述べた。
福島第一原子力発電所事故後、諸外国・地域で設定された輸入規制は、49の国・地域(EUは一つとしてカウント)で既に撤廃。その一方、香港の他、ロシア、中国、マカオ、韓国、台湾が現在も規制を継続している。中でも、昨夏に開始したALPS処理水の海洋放出に伴い、中国とロシアでは全都道府県の水産物が輸入停止となっている状況だ。中国で続く輸入規制に関し、坂本農水相は、これまでの二国間会談や国際的議論を通じた即時撤廃の働きかけに言及した上、「引き続き科学的根拠に基づかない輸入規制措置に関して、政府一丸となって強く働きかけていく」と強調した。
農水省が8月2日に発表した2024年上半期の農林水産物・食品輸出額によると、中国は対前年同期比43.8%減、香港は同10.5%減。輸出額の減少が最も大きい品目は、ホタテ貝(生鮮等)の同142億円減で、中国・香港による日本産水産物の禁輸措置が減少要因とみられている。一方で、海外バイヤーの日本招へい、国内加工業者の海外派遣など、国内の水産業を守る政策パッケージが成果をあげており、ホタテ貝の輸出額は、ベトナム、タイ、米国向けで、それぞれ対前年同期比約7.9倍、約3.5倍、約1.6倍と、増加している。