原子力産業新聞

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文科省WG 核融合エネ「発電実証の前倒し」に向け検討開始

19 Aug 2024

石川公一

文部科学省の有識者ワーキンググループは8月19日、核融合エネルギーの実現に向け、「発電実証のさらなる前倒しの可能性」について検討を開始した。〈配布資料は こちら

ITER(国際熱核融合実験炉)に続き、日本において発電実証を行う原型炉の研究開発については、「統合イノベーション戦略」(6月に閣議決定)、「新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画2024年改訂版」(同)で、世界に先駆けて「2030年代の発電実証」を目指す方針。7月10日、文科省の核融合科学技術委員会は、ITER計画の進捗状況(ファーストプラズマ達成は2025年から34年頃に遅れる)や諸外国による核融合開発の目標などを踏まえ、原型炉の研究開発方針を見直す考えを示している。〈既報

8月16日、同委員会下のWGは、量子科学技術研究開発機構(QST)量子エネルギー部門研究企画部長の大山直幸委員らよりヒアリング。原型炉による発電時期の前倒しについて、QSTは、「スタートアップを含む産業界の取組をも後押しするもの」と期待感を示した上で、2035年頃に原型炉段階への移行判断を行う「JA DEMO」構想を紹介した。QSTは、ITER計画における日本国内機関としての立場からも、今後の原型炉概念に関し、日本の技術力が発揮されるトロイダル磁場コイル、増殖ブランケット、ダイバータについては、「ITER技術基盤の延長線上」に概念を構築し、一方でITERにない技術については、「産業界の発電プラント技術および運転経験、大学などによる未踏技術の解決方策」も取り入れた概念を構築していくと、技術的見通しを説明。他の委員からは、海外におけるトカマク型以外の研究開発など、ベンチャー企業や萌芽的研究の台頭も踏まえ、「原型炉への移行判断に必要な要素」については、十分に留意する必要性が指摘された。

これを受け、文科省からは、原型炉実現に向けた基盤整備として、研究開発、人材育成、アウトリーチ活動、イノベーション拠点化について、各取組の具体的な方向性が整理され、今後の議論に先鞭を付けた。人材育成については、ITER参加7極の学生・若手研究者が日本で核融合の専門分野を学ぶ「ITER国際スクール」(IIS)の2024年日本主導開催や、QSTの施設を活用した「JT-60SA国際核融合スクール」(第2回JIFS)が8月26日に始まることなどを紹介。アウトリーチ活動については、2025年度に大阪万博において広報活動が実施される予定。委員からは、「若い層からも注目が集まっている」として、各取組を融合した活動強化の必要性を示唆する発言があった。

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