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ロシア 新世代燃料被覆管のパイロット生産を開始

20 Aug 2024

桜井久子

クロムメッキされた燃料被覆管(右半分) ©Rosatom

ロシア国営原子力企業のロスアトムは8月5日、ロシアのウドムルト共和国のグラゾフにあるロスアトムの燃料部門傘下のチェペツク機械工場において、クロムメッキの燃料被覆管の商業規模のパイロット生産を開始したことを明らかにした。

同施設では従来のジルコニウム合金製の長い被覆管に、スプレーを用いてクロムの保護コーティングを直接塗布し、燃料被覆管のパイロットバッチを製造した。ロスアトムによると、この構造材料は燃料の安全性を向上させた新世代燃料である、事故耐性のある先進技術燃料(Advanced Technology Fuel:ATF)に応用が可能で、原子炉の安全性と効率を高めるという。

ロシア南西部のロストフ原子力発電所2号機(VVER-1000、100万kWe)では、2021年から、クロムメッキのジルコニウム合金とクロムニッケル合金の2種の燃料被覆管を用いた試験用ATF燃料棒を各6本、燃料集合体3体に組み入れてパイロット運転をしてきた。この技術ソリューションは、緊急時に炉心でのジルコニウム蒸気反応の進行を排除または大幅な減速を可能にするという。チェペツク機械工場では今後、クロムメッキの燃料被覆管の燃料集合体を数体製造、大型炉に装荷してパイロット運転をする予定。ATF燃料の適格性を確認し、その商業生産に道筋をつけたい考えだ。

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