原子力産業新聞

海外NEWS

英コアパワー社、原子力船実現に向けて海運業界大手と共同研究開始

23 Aug 2024

深澤伊弦

コアパワー社の原子力船のイメージ図ⒸCORE POWER

英国のコアパワー社は815日、ロイド船級協会(LR)、海運業界最大手のデンマークのA.P.モラー・マースク社とともに、第4世代原子炉を動力源としたコンテナ船の実現に向けて、規制要件や安全性を調査する共同研究プロジェクトを開始した。 

コアパワー社の発表によると、今回の共同研究は、温室効果ガス(GHG)排出量削減を求められている海運業界全体に、原子力船の実現に向けた判断材料を提供するのが狙いで、同社の浮体式原子力発電所プロジェクトを手掛けてきた経験、LRの長年にわたる船級協会としての専門知識、海運業界最大手のマースク社の経験を活かしていくとしている。

コアパワー社のM. ボーCEOは、「原子力がなければ、ネットゼロを実現することは不可能だ」と述べ、LRのN. ブラウンCEOも「今回の共同研究開始は、海運業界に原子力発電の可能性を解き放つ刺激的な旅の始まり。海運業界の脱炭素化に向けた原子力を含む多燃料化は、国際海事機関(IMO)が求める排出削減目標を達成するために不可欠」と述べた。マースク社の船舶技術責任者である、O.G.ヤコブセン氏は、安全性、廃棄物処理、地域の理解といった原子力発電に関する課題に触れつつ、「これらの課題が第4世代の原子炉開発によって解決されれば、今後1015年で物流業界の脱炭素化のオプションの一つとなり得る」と期待した。 

IMOの「2023 IMO GHG削減戦略」は、国際海運からのGHG排出量を2050年頃までに正味ゼロにすることを目標として掲げ、海運業界にとってGHGの削減は大きなミッションとなっており、原子力船についても様々な方向から検討がなされている。今年6月にコアパワー社が英国で開催した「第5回海事向け新原子力サミット」には関係者250人以上が集まり、原子力と海事の専門家が原子力船実現に向けた講演やディスカッションを行った。なお、今年7月には韓国の大学で世界初の小型モジュール炉(SMR)搭載船舶を研究する機関が設立されている。 

cooperation