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米パリセード発電所 再稼働へ向け冷却システムを更新へ

26 Aug 2024

桜井久子

冷却水熱交換器  ©Holtec International

米ホルテック・インターナショナル社は8月15日、同社のパリセード原子力発電所の改修の一環として、ミシガン湖の水温上昇予測に対応する新しい熱交換器システムを製造中であると発表した。

ホルテック社によると、湖や海、川などの水域からの冷却水に依存する発電所の出力は、地球温暖化の影響で水温が上昇するにつれて確実に低下。現在、改修工事中のパリセード原子力発電所に冷却水を供給するミシガン湖の水温は、世界の他の貯水池と同様に上昇を続けており、今後数十年の運転期間延長の間にも、上昇を続けると予想している。

パリセード発電所の改修の一環として、ホルテック社は、ペンシルベニア州ピッツバーグにある自社の工場で冷却水熱交換器システムを製造している。既存の熱交換器の設置スペースが極めて限られる中、予想される湖水温度の上昇に対応するため、新しい熱交換器は既存の2倍以上の伝熱面積が必要であった。自社の革新的な設計開発によりアップグレードされた熱交換器セットは、2025年末に予定されるパリセード発電所の再稼働のため、今後1年以内に設置される予定。この冷却システムのアップグレードには土木/構造工事がほとんど必要なく、費用は当初の見込みより50%以上削減できる可能性があるという。

ホルテック社のJ. ラッセル広報担当責任者は、「地球温暖化が原子力発電所やその他の発電所に及ぼす悪影響と闘うために何が可能か、この技術的成果を他の発電所の関係者と共有したい」と述べた。

パリセード発電所(PWR、85.7万kWe)は、1971年に営業運転を開始し、2022年5月に永久閉鎖となり、翌6月、同発電所は所有者・運転者のエンタジー社から、廃止措置を実施するため、ホルテック社に売却された。近年、各国が炭素負荷の抑制に取り組み、原子力のようにクリーンなエネルギー源が重視される時代となったことを受け、ホルテック社は同発電所を再稼働する方針に切り替え、2023年10月、米原子力規制委員会(NRC)に運転認可の再交付を申請した。

パリセード発電所の再稼働方針については、ミシガン州のG. ホイットマー知事が2022年9月に支持を表明。2023年7月には、同発電所の再稼働に1.5億ドル(約215.4億円)の支援を盛り込んだ2024会計年度の州政府予算法案に署名している。2024年4月には、米エネルギー省(DOE)が融資プログラム局(LPO)を通じて、同発電所の再稼働に向けた融資保証として15.2億ドル(約2,183.2億円)を上限とする条件付きの提供を発表。ホルテック社は、少なくとも2051年まで運転できるよう種々の機器の大規模な改修や交換工事プラントの改良を実施中だ。

なお、ホルテック社は、同社製小型モジュール炉「SMR-300」(PWR、30万kWe)を2基、パリセード発電所サイトに建設する計画も進めている。同2基が稼働すれば、ミシガン州の無炭素電源の設備容量はほぼ倍増となる。2026年の建設許可申請を予定している(既報)。

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