原子力産業新聞

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カザフスタン 原子力発電所建設をめぐる一連の公開討論が終了

29 Aug 2024

桜井久子

公開討論の様子
©Ministry of Energy of the Republic of Kazakhstan

カザフスタンの首都アスタナで820日、今秋に予定されている原子力発電所の建設に関する国民投票を前に、20回目となる最後の公開討論が開催された。公開討論は、原子力分野の専門家、政府関係者、一般市民が参加し、国内複数の地域で2023年夏から開催されてきた。

同討論会で、エネルギー省原子力産業局のG. ムルサロヴァ副局長は、同国は総発電電力量の70%を石炭火力に依存しており、複数の石炭火力発電所が今後10年で閉鎖されると指摘。一方、電力消費量は年間約3%増加し、2023年には消費電力1,150kWhの内、20kWhがロシアから供給されたと懸念を表明。エネルギー安全保障の観点から、今こそ原子力発電所の建設に向けて行動する時だと述べた。また、周辺国の状況として、ベラルーシとアラブ首長国連邦が初の原子力発電所を運転開始し、トルコでは現在建設中、隣国ウズベキスタンは小規模な原子力発電所の建設を発表していると強調した。

有限責任事業組合「カザフスタン原子力発電所」(KNPP)のT. ジャンチキン事務局長は、首都アスタナを含むカザフスタン北部では電力不足はないが、同国最大の人口を擁する南部の都市アルマティ周辺の状況は複雑で、既存の送電線も南部地域への送電には十分な容量ではないと説明。なお、アルマティ州のジャンブール地区にあるバルハシ湖西南のウルケン村が原子力発電所の建設サイトとして選定されている。また同事務局長は、13件の炉型候補から、建設と運転経験で実証済みの4炉型の選定に言及したほか、原子力発電所の建設は、新たな雇用創出だけでなく、同国経済と関連産業の発展に重要な相乗効果を与えるものだと強調した。KNPPは、カザフスタンにおける原子力発電所建設の事業化可能性調査や設計文書の作成などを目的に2014年に設立された。

2023年9月、K.-J. トカエフ大統領は国民向けのメッセージの中で、原子力発電の導入は経済的・政治的に重要であると強調し、原子力発電所の建設を国民投票で決議することを提案。同大統領は今年6月下旬、原子力発電所の建設に関する国民投票を今秋実施すると発表した。

なお、大統領直轄の戦略研究所はこのほど、87日~18日に実施した原子力発電所建設に対する国民の意識調査の結果を公表した。調査は、大都市であるアスタナ、アルマティ、シムケントを含む17の地域の18歳以上の1,200名を対象に電話で実施された。回答者の53.1%が原子力発電所建設を支持し、32.5%が反対を表明している。

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