自民党総裁選に向け候補者討論 日本記者クラブ
17 Sep 2024
討論に臨む高市氏、小林氏、林氏、小泉氏、上川氏、加藤氏、河野氏、石破氏、茂木氏(左より)
8月14日に岸田文雄首相が退陣を表明した。次期政権については、あくまで国会による首班指名後となるが、9月27日に投開票が行われる予定の自由民主党総裁選挙に注目が集まっている。14日には、日本記者クラブ主催で、その立候補者9名による討論会が行われた。
冒頭、各候補者はそれぞれ、高市早苗氏「経済成長」、小林鷹之氏「世界をリードする国へ」、林芳正氏「実感できる経済再生」、小泉進次郎氏「政治改革」、上川陽子氏「誰一人取り残さない日本の新しい景色」、加藤勝信氏「国民の所得倍増」、河野太郎氏「改革の実績 熱さと速さ」、石破茂氏「全ての人に安心と安全を」、茂木敏充氏「『増税ゼロ』の政策推進」と、自身のマインドをフリップに書いて主張。続けて候補者同士の討論が行われた。
2021~22年に内閣府科学技術政策担当相を務めた小林氏は原子力・エネルギー政策に関連し、「今後、電力需要は激的に増加していく。経済成長を続けるためには安価で安定した電力供給が不可欠。バランスの取れた電源構成が必要で、特に再生可能エネルギーに偏り過ぎる現行のエネルギー基本計画を年内にも変えるべき」と発言。その上で、「安全性が確認された原発の再稼働、リプレース・新増設に取り組んでいくべき。再稼働が進んでいるか否かで電気料金に東西で格差が生じている」として、石破氏に考えを問うた。
これに対し、石破氏は「3・11の教訓は決して忘れてはいけない。本当に原子力発電は安全を最大限にしなければいけない」と、福島第一原子力発電所事故の経験を肝に銘ずることの重要性を強調。日本が有する地熱発電のポテンシャルにも言及する一方で、「AI社会は確かに電力を食う。しかし新しい半導体工場は従来の半分の電力でやっていける。省エネも最大限に導入し、結果として原発のウェイトを下げることになっていく」との見方を示した。同氏は、党幹事長の頃、国会の首相演説に対する代表質問の際、議場内の照明・空調を指し「今電力が供給されているのは、現場の厳しい努力によるものだ」と、エネルギーセキュリティに対する危機感を示したことがある。
さらに、現在、官房長官を務める林氏が能登半島地震を振り返り、自然災害発生時の指揮系統の有効性を尋ねたのに対し、石破氏は、内閣府(防災担当)の予算規模・人員の現状に鑑み、「事前の予知や発災時の対応はもう『不可能』」との認識を示し、内閣府の外局として「防災庁」を新設する考えを述べた。
また、小泉氏は、2025年のカナダ・カナナスキスG7サミットを展望し、「カナダのジャスティン・トルドー首相は就任時43歳で、私も今43歳。同年齢のトップ同志が新たな未来志向の外交を切り拓き、新時代の扉を開いていくG7としたい」と主張。現外務相の上川氏は、2023年のG7広島サミットを振り返り「世界中に被爆国として平和のメッセージを力強く発信した。これをしっかりと受け止めながら国連安保理理事会やG7で『平和』を念頭に置くとともに、その中に女性の目線を入れるということを訴えてきた」とのスタンスを強調した。
現在、党幹事長を務める茂木氏は政治とカネの問題に関し「二度と同じ問題を起こさない」との姿勢を繰り返し強調。加藤氏は厚生労働相の経験から、働き方改革や次年度政府予算110兆円の規模感に言及。内閣府経済安全保障相を務める高市氏は、「すべてにおいて数値目標を明らかにするのは現時点で非常に難しい。今なぜ物価が上がっているのか。エネルギー、食料とか。自然に需要が増えることができたら、供給サイドも生産性があがり、購買力もあがるという好循環につながるのでは」などと述べた
また、デジタル担当相の河野氏は、「脱原発」の姿勢について問われたのに対し、「電力需要は右肩上がり、2050年には1兆4000億kWhの需要が予測される」との見通しから、データセンターの海外移転に伴う国力衰退も懸念し、「現実的視点」として、再生可能エネルギーの限界、原子力発電の必要性を示唆した。