中国による日本産水産物の輸入規制が緩和に向け動く
24 Sep 2024
福島第一原子力発電所のALPS処理水海洋放出開始に伴い、現在も続く中国による日本産水産物の輸入規制が緩和される方向で動き出した。
岸田文雄首相は9月20日、IAEAのラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長と電話会談。会談後、記者会見を行った岸田首相は、「IAEAの現行のモニタリングが拡充され、その中で、中国を含む3か国の専門家による採水等のサンプリングや、分析機関間の比較が実施されることで一致した」と説明。加えて、これまでの日中政府間における事務レベルの協議に関して言及し、「中国側は、日本産水産物の輸入規制措置の調整に着手し、基準に合致した日本産水産物の輸入が着実に回復されることとなった」と述べた。今後の具体的道筋については明らかされていないが、駐日中国大使館に対するこれまでの度重なる説明や情報発信に加え、今回の追加的なモニタリング実施計画も踏まえ、両国間が共通認識に至ったものとしている。
福島第一原子力発電所事故後、諸外国・地域で設定された輸入規制は49の国・地域(EUは一つとしてカウント)で既に撤廃。その一方で、ロシア、中国、香港、マカオ、韓国、台湾では、検査証明書の要求も含め、輸入規制が継続している。岸田首相は、会見の中で、日本産食品などに係る科学的根拠に基づかない輸入規制の「即時撤廃」を求めていく姿勢をあらためて強調。今回の中国側による動きに関して、「追加的なモニタリングの実施を踏まえ、当然、日本産水産物の輸入が着実に回復されるもの」と、期待を寄せた。
ALPS処理水の海洋放出は、2023年8月に開始し、約1年が経過。IAEAは、日本政府との間で署名された「ALPS処理水の取扱いの安全面のレビューに関する付託事項」(2021年7月)に基づき、海洋放出開始以前から、これまで安全性レビューミッションを日本に派遣してきた。2024年4月には、海洋放出開始後、2回目となるミッションとして、IAEA職員の他、国際専門家9名(アルゼンチン、英国、オーストラリア、韓国、中国、フランス、ベトナム、米国、ロシア)で構成するタスクフォースが訪日。その結果、「関連する国際安全基準の要求事項と合致しないいかなる点も確認されなかった」とする報告書を公表している。
坂本哲志農林水産相は9月24日の閣議後記者会見で、まず北陸・東北地方の大雨被害に万全の対応を図ることをあげた上、同25~30日にイタリア・シラクーザで開催されるG7農業相会合への出席について言及。世界の食料安全保障の確保を参加国に対し呼びかける姿勢を示すとともに、日本産食品の輸出先多角化に向け、「日系のみならず現地系スーパーやレストラン、新興国、地方都市等の新たな市場開拓が重要」と強調した。坂本農水相は8月にも、香港で開催されたアジア最大級の食の見本市「Food Expo PRO 2024」を訪れ、日本産食品の輸出拡大に向けてトップセールスに臨んでいる。