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Googleと米ケイロス・パワー社が先進炉導入で提携

17 Oct 2024

桜井久子

© Google

IT企業大手Google社と米原子力新興企業のケイロス・パワー社は1014日、2035年までに複数の先進炉導入による電力購入契約(PPA)を締結した。この契約は、先進炉の複数基導入に関する米国初の企業間契約になるという。

本契約により、ケイロス社が開発する先進炉のフッ化物塩冷却高温炉を複数基、合計出力にして最大50kWeが建設され、Google社のデータセンターに電力を供給する。初号機を2030年までに運転開始させた後、後続機を順次建設していく計画だ。なお、建設サイトや契約額などの詳細は明らかにされていない。

ケイロス社は、米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」でフッ化物塩冷却高温実証炉「ヘルメス」(非発電炉、熱出力3.5kW)の土木工事(掘削工事)に着手している。ヘルメスは202312月に、米原子力規制委員会(NRC)が50年以上ぶりに建設を許可した非水冷却炉だ。TRISO燃料(3重被覆層・燃料粒子)と熔融フッ化物塩冷却材を組み合わせ、原子炉の設計を簡素化しているのが特徴で、2027年に運開予定。ヘルメスは、DOEによる「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」の支援対象炉でもある。また、ヘルメスに隣接し、同炉を2基備えた実証プラント「ヘルメス2」(発電炉、2kWe)の建設許可が昨年7月に申請されている。ケイロス社はこれらのヘルメス・シリーズで得られる運転データやノウハウを活用して、技術面、許認可面および建設面のリスクを軽減、コストを確実化して、2030年代初頭に商業規模の「KP-FHR」(熱出力32kW、電気出力14kW)の完成を目指している。

Google社は脱炭素化に本格的に取り組んでおり、2010年以来、115件以上の契約により合計1,400kWe以上の発電設備からクリーンな電力を調達している。今回の契約によりGoogle社は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの既存利用を補完するとともに、安定したカーボンフリーの電力供給と2030年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという野心的な目標の達成を目指している。

Google社のエネルギー・気候変動担当シニアディレクターのM. テレル氏は今回の提携発表について、Google社とケイロス社が米国の電力網に新たに50kWeのカーボンフリーの電力を年中無休で供給し、クリーンエネルギーへの移行を加速させると強調。先進的なエネルギー技術を商業化させて、規模を拡大し、将来的により多くのコミュニティがクリーンで安価な電力を享受できるようにするというGoogle社の強い意欲を示した。Google社は今年7月に公開した2024年の環境報告書で、2023年の温室効果ガスの排出量が2019年比で43%増加し、2030年までにネットゼロの目標達成は、データセンターの電力消費の増加とサプライチェーン・インフラによる排出量の増加で困難に直面していると指摘しており、クリーンかつ増大する電力需要を満たす電源の確保が急務となっていた。

生成AI(人工知能)の普及により、データセンターの電力消費量が急増する中、大手テック企業では、再生可能エネルギーへの投資とともに、信頼性の高い原子力の活用を進める動きが活発化している。米マイクロソフト社は今年9月、大手電力会社のコンステレーション・エナジー社と閉鎖済みのスリーマイル・アイランド(TMI)1機(PWR、89万kWe)を再稼働させ、マイクロソフト社のデータセンターに電力を供給する、20年間の売電契約の締結を発表。また同機と同じくペンシルベニア州にあるサスケハナ原子力発電所(BWR133.0kW×2基)に隣接するデータセンターを今年3月、米アマゾン傘下のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)社買収している。

 

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