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中西準子氏 環境リスク管理学で文化勲章

28 Oct 2024

石川公一

文化勲章を受章する中西準子氏

政府は10月25日、2024年度の文化勲章受章候補者7名を発表した。

原子力・放射線分野では今回、中西準子氏(横浜国立大学名誉教授)が受章する。同氏は、環境リスク管理学の分野で、環境政策の立案や法整備に貢献。科学的定量化に基づく環境リスク評価・リスク管理のスキームを世界に先駆けて提唱するなど、産業技術の発展や原子力災害対策で功績があった。先端技術の製品化に係る工業ナノ材料開発の他、2011年の福島第一原子力発電所事故後は、放射能汚染、避難、除染に関して、住民らが自身で判断するために有用なリスク情報の提供にも取り組んできた。食品中の放射性物質に係る基準値の理解に向けては、「原発事故と放射線のリスク学」などを著し、放射線分野のリスクコミュニケーション啓発にも努めている。

今回の受章決定は、研究成果として、「化学物質環境リスク研究の国家拠点形成や環境問題での政策立案に活かされた」ことが高く評価されたもの。高度経済成長が停滞し始めた1970年代は公害が喫緊の社会問題となっており、同氏は、都市工学の視点から、化学物質の広域大気濃度推定モデル開発など、環境汚染の定量的評価に着目し技術面で貢献。産業技術総合研究所にも籍を置き、化学物質リスク管理の社会実装に取り組んできた。受章決定に際し、中西氏は、「少し先の時代の声に耳を傾けつつ、研究を進めてきた」とするとともに、高等教育に携わってきた経験から「多くの学生たちの知性と応援もあった」とのコメントを発表した。2013年には瑞宝重光章を受章している。

今年度の文化勲章は、中西氏の他、「あしたのジョー」や「おれは鉄兵」の著者として知られる漫画家のちばてつや氏も受章する。

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