米FERC データセンターへの電力供給拡大を認めず
06 Nov 2024
サスケハナ原子力発電所 © Talen Energy
米連邦エネルギー規制委員会(FERC)は11月1日、米電力会社タレン・エナジー社がペンシルベニア州に所有するサスケハナ原子力発電所から米アマゾン傘下のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)社のデータセンターへの電力供給を拡大する契約の修正を却下した。
タレン社は今年3月、所有するキュムラス(Cumulus)データセンター・キャンパス(最大容量96万kW)を6.5億ドル(約994億円)でAWS社に売却、10年間の電力購入契約(PPA)を通じて、隣接するサスケハナ原子力発電所(BWR、130.0万kW×2基)から同キャンパスへ、固定価格で電力を供給する契約を交わしている。
生成AI(人口知能)の普及などでデータセンターの電力需要の増大を受け、系統運営機関であるPJM社は6月初旬、AWS向けに、すでに認可されている30万kWに18万kWを追加し、系統のアップグレードなしに48万kWへ拡大することを求め、相互接続サービス契約(ISA)の修正承認をFERCに求めた。一方、FERCは、「ビハインド・ザ・メーター」(Behind the meter)[1]送配電網を必要とせずに、電気の需要地点(on-site=オンサイト)で電力を供給する状況での電力販売の拡大を認める特別契約がなぜ許可されるべきかを証明する十分な根拠がなく、修正は送電網の信頼性を脅かし、電気料金を上昇させる可能性があるとし、5名の委員のうち、2対1の票決(2名は棄権)により修正を却下した。修正に賛成したW. フィリップス委員長は、「人工知能(AI)分野における米国のリーダーシップの維持こそ、国家安全保障を維持するために必要であり、信頼できる電力へのアクセスはデータセンターの生命線。今回の決定は電力の信頼性と国家安全保障の両方にとって後退だ」と述べた。
なお、米電力大手エクセロン社とアメリカン・エレクトリック・パワー(AEP)社は、6月下旬、ISAが送電システム使用料の支払者に不公平なコスト負担をもたらし、市場の運営と信頼性に悪影響を与える可能性があるとしてFERCに抗議文書を送付。コロケーション(Co-location)[2]所有者や運用者が異なる設備や機器を同じ施設にまとめて設置すること自体に異論はないが、データセンターが送電システム使用料やその他の料金の公正な割合を支払う必要があると主張していた。
FERCの裁定を受け、タレン社は11月3日に声明を発表し、「FERCは誤りを犯した。この修正ISA は公正かつ合理的であり消費者の最善の利益になる。FERCの決定は、ペンシルベニア州、オハイオ州、ニュージャージー州などの州の経済発展に委縮効果を与えるだろう」と言及。タレン社は、AWSのデータセンター・キャンパスの第一段階の開発は既存のISAに基づいて継続し、他の商業的解決策を模索するとしている。