原子力産業新聞

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スウェーデン 最終処分場の建設・操業の環境許可発給

07 Nov 2024

桜井久子

フォルスマルクにおける使用済み燃料の最終処分場の完成予想図 © SKB

スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)は1026日、国土環境裁判所から、フォルスマルクに使用済み燃料の最終処分場およびオスカーシャムに地上の使用済み燃料封入プラントを建設・操業を可能にする、環境法に基づく許可を取得した。同裁判所は環境許可の発給にあたり、環境保護のための適用条件も設定。また、SKBに対し、年明けにフォルスマルクで初期作業を開始できるようにする施行令も出した。

スウェーデンの原子力発電所を所有・運転する電力会社が共同出資して設立したSKBは2011年、使用済み燃料の最終処分許可を国土環境裁判所に申請。同裁判所は環境法に基づき、処分方法や立地選定などの環境影響について審査。2022年1月、政府は、原子力活動法に基づき、放射線安全機関(SSM)の審査を経て、使用済み燃料の最終処分場をウプサラ県エストハンマル自治体のフォルスマルク(Forsmark)に、カルマル県オスカーシャム自治体のシンペヴァルプ(Simpevarp)に使用済み燃料封入プラントの建設許可を発給している。今回の環境許可を受け、不服申し立てがあった場合でも、SKBは両サイトで作業を開始することが可能となる。なお、環境保護の適用条件には、騒音、地下水の減少、排水などへの規制のほか、フォルスマルクの野生保護種や自然地域の保護も含まれる。将来世代への情報保全や処分場閉鎖後の環境モニタリングの実施も定められている。

SKBは、ウプサラ県執行機関による管理プログラムの承認後、施行令の範囲内で、フォルスマルクのサイトにおける、樹木の伐採、サイトの掘削作業、岩石貯蔵スペースの建設、冷却水路に架かる橋の建設などの準備作業を実施する。SKBが実際の坑道掘削工事を開始する前には、スウェーデン放射線安全局(SSM)による安全解析報告書(SAR)の承認が必要となる。フォルスマルクの使用済み燃料貯蔵所の建設の工期は約10年を見込む。オスカーシャムの使用済み燃料封入プラントよりも2年早く着工し、両施設とも2030年代半ばには試験操業させたい考えだ。

使用済み燃料は現在、SKBの集中中間貯蔵施設CLABに一時貯蔵されている。使用済み燃料封入プラントはCLABに隣接して建設され、完成すると両施設合わせてCLINKと総称される。なお、発給された環境許可は、スウェーデンで12基の原子炉(現在、6基が稼働中)からの使用済み燃料に適用され、計画中の新設炉には適用されない。SKBは、約12,000トンの使用済み燃料を含む約6,000体のキャニスターを最終処分場で処分する。最終処分場の操業期間を約70年と見込むが、既設炉の運転期間延長に応じて、延長される可能性もある。

最終処分は、使用済み燃料を囲む厚さ50mmの銅ケーシングのキャニスター、キャニスターを囲む緩衝材、フォルスマルクの岩盤の3つの安全バリアに基づくKBS-3法(フィンランドの深地層処分場「オンカロ」も同様)を用いる。使用済み燃料キャニスターは19億年前の地下岩盤約500mの深さに定置され、2080年代の坑道完成時の全長は60km以上になるという。環境評価にあたり、10万年の期間において環境中に拡散する放射性物質のリスク調査が必要であった。

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