福島第一2号機の燃料デブリ 分析に向け原子力機構へ
14 Nov 2024
試験的取り出しがなされた燃料デブリの輸送トラックが原子力機構大洗研に到着(原子力機構提供)
東京電力は11月12日午後、福島第一原子力発電所2号機から試験的取り出しとして採取した燃料デブリを、日本原子力研究開発機構の大洗原子力工学研究所に輸送を完了した。翌13日には、車両への積載作業の模様を紹介した動画を公開。14日には、原子力規制委員会の事故分析検討会で、作業状況について説明を行った。〈東京電力発表資料は こちら〉
福島第一原子力発電所廃止措置ロードマップで、燃料デブリ取り出しは2号機より着手することとされており、試験的取り出しのため、今夏、テレスコ式装置(短く収納されている釣り竿を伸ばすイメージ)を、原子炉格納容器(PCV)にアクセスする貫通孔の一つ「X-6ペネ」から挿入し準備を開始。ガイドパイプの接続手違いによる作業中断も生じたが、10月30日に同装置は燃料デブリに到達し、11月7日には試験的取り出しを完了した。
原子力機構に輸送された燃料デブリは今後、数か月から1年程度をかけて分析が行われ、本格的取り出しに向けて、工法、安全対策、保管方法の検討に資することとなる。
燃料デブリを受入れた原子力機構では、分析に必要な設備・装置を有する照射燃料集合体試験施設(FMF)で、その性状を評価し、炉内状況推定の精度向上を図っていく。同機構廃炉環境国際共同センター(CLADS)技術主席の荻野英樹氏は12日夜、大洗原子力工学研究所で行われた記者会見の中で、「取り出された燃料デブリは0.7g程度」としながらも、今後の試料分析に際し「結晶構造がどのような温度変化をたどって、どのくらいの速さで事象が進捗し形成されたかが推測できる」と述べ、技術的立場から試験的取り出しの意義を強調した。分析が完了後、使用目的のない残りの燃料デブリについては東京電力に返却される。〈原子力機構発表資料は こちら〉
今後、燃料デブリの分析・評価の中心となる大洗原子力工学研究所の構内・近隣には、走査型電子顕微鏡などの高度な分析機器を備えた日本核燃料開発、材料研究や学生の実習受入れでも実績のある東北大学金属研究所が立地している。段階的に燃料デブリの取り出しが進む中、分析・評価の成果は、将来的に廃炉人材の育成や事故耐性燃料(ATF)の開発にも活かされそうだ。