英NDA サイバーセンターを開設
03 Dec 2024
GCCCの開所式で、テープカットするNDAのピアッティCEO© Nuclear Decommissioning Authority (NDA)
英国の原子力廃止措置機関(NDA)は11月25日、イングランド北西端のカンブリア州にあるセラフィールド原子力施設の近隣に、専門のサイバーセンターを開設した。原子力事業者とサプライチェーン間の連携を加速することを目的に、AI(人口知能)やロボティクス(ロボット工学)などの革新的な技術を採用し、サイバーテロなどの脅威からの防御能力を強化する。
NDAは、英国内の原子力施設の廃止措置ならびにサイトのクリーンアップ、使用済み燃料や放射性廃棄物の安全管理などを担当する政府外公共機関(NDPB)。セラフィールド社を筆頭に、廃止措置、廃棄物管理、核物質輸送などの分野に特化した傘下の4社がある。
英政府は現在、サイバー脅威レベルの増大に対応して、国家インフラのサイバーセキュリティの態勢を整えている。サイバーセキュリティへの攻撃は、民生用原子力部門を含むすべての組織に共通する大規模な脅威であるとの共通認識の下、NDAはサイバーセキュリティセンター「Group Cyberspace Collaboration Centre(GCCC)」を開設。GCCCでは、サイバー、デジタル、エンジニアリング分野の専門家が集まり、進化するサイバーセキュリティの脅威から防御する最善策について知見を共有する。NDAグループの廃炉ミッションを支援するとともに、セキュリティ運用、サイバー演習、訓練を促進する新技術を検討するための多機能スペースだ。
GCCCの開所にあたり、NDAのD. ピアッティCEOは、「GCCCは、サイバー空間における安全、セキュリティ、回復力、持続可能性の確保のために共同で能力強化を図り、サイバーセキュリティの脅威を一丸となって排除し、顧客を含めた集団安全保障に貢献する。セキュリティに関して決して満足することはなく、さらなる能力強化のために、NDAグループ全体のサイバー防衛へ継続的に投資していく」と語り、GCCCの活用により、NDAの廃炉ミッションを安全かつ確実に、コストを抑えて遂行したい考えを示した。
開所式に参加した、英原子力規制庁(ONR)のW. カイン監督検査官は、「すべての原子力施設は、サイバー脅威から重要な情報と資産を保護するために、強力なサイバーセキュリティシステムを整備する必要がある。サイバーセキュリティは、ONRにとって重要な規制上の優先事項であり、GCCCによるサイバー防衛強化の取組みを歓迎する」と述べた。
なお、セラフィールド社は、2019年~2023年の4年間のサイバーセキュリティー上の不備をONRに指摘され、今年10月に罰金を科されている。同社のITシステムが不正アクセスやデータ損失に対して脆弱であり、セキュリティ規則違反と認定されたもの。同社は、カンブリア州で広大な原子力施設を運営しており、旧原子力施設から発生した放射性廃棄物などの回収、プルトニウムやウランを含む特殊核物質の貯蔵、使用済み燃料の管理、サイト内の施設の解体処理などを実施している。