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スイス ベツナウ発電所が60年超運転へ

16 Dec 2024

桜井久子

ベツナウ発電所とアーレ川 © Axpo

スイスの電力会社であるAxpo社は125日、同社が所有・運転するベツナウ原子力発電所1、2号機(PWR、各38kWe)をそれぞれ2033年、2032年まで運転する方針を明らかにした。運転期間は60年を超えるが、それ以降の運転延長はせずに閉鎖する予定。

ベツナウ発電所はスイス最古の原子力発電所。1号機は1969年、2号機は1972年にそれぞれ営業運転を開始した。年間60kWhを発電し、地域暖房向けの熱供給も行っている。Axpo社はこれまで、ベツナウ発電所の運転開始以降、バックフィットに25億スイスフラン(約4,315億円)以上を投資してきたが、今後の運転継続のために3.5億スイスフラン(約604億円)を投じる計画だ。Axpo社は本決定をするにあたり、当初の予定を上回る60年間の運転が可能かどうか、主要コンポーネント(原子炉圧力容器など)の健全性や、人材、サプライヤー、燃料の確保など、包括的な調査を実施。外部の専門家やサプライヤーにも相談し、スイス連邦原子力安全検査局(ENSI)とも協議した。なお、スイスの原子力発電所には運転期間の制限はなく、安全性が保証されることを条件に運転者は発電所の運転期間について自由に決定できるが、規制活動の枠組みの中で常に検討されている。ENSIが全体的な安全性評価のために定期安全レビュー(PSR)を10年ごとに実施。40年間の運転後には長期運転のための安全評価も実施する。次のPSRは、2027年末までにベツナウ発電所がENSIに提出する必要がある。

スイスでは、ベツナウ発電所の2基のほか、2サイト(ゲスゲン、ライプシュタット)と合わせて、計4基が運転中。1基(ミューレベルク)が廃止措置を実施している。スイスの総発電電力量の約3割を原子力発電が、約6割を水力発電が占める。

 

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