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ロシア 第4世代高速炉の燃料製造施設が試験操業を開始

08 Jan 2025

桜井久子

劣化ウラン窒化物燃料を用いたBREST-OD-300向けのモックアップ燃料集合体を初製造
Ⓒ The State Atomic Energy Corporation ROSATOM

ロシア国営原子力企業ロスアトムは1225日、鉛冷却高速実証炉「BREST-OD-300」の燃料加工/再加工モジュール施設の試験操業を開始したことを明らかにした。

同施設は、BREST-OD-300と再処理モジュールと並んで、パイロット実証エネルギー複合施設(PDEC)を構成する3施設のうちの1つ。PDECは、ロスアトムが進める戦略的プロジェクト「ブレークスルー(Proryv)」の一環として、西シベリアのトムスク州セベルスクにあるシベリア化学コンビナート(ロスアトム燃料部門の企業)のサイト内で建設が進められている。BREST-OD-300は冷却材に鉛を使用、ウラン濃縮の副産物である劣化ウランと使用済み燃料から抽出したプルトニウムを利用した、ウラン・プルトニウム混合窒化物(MNUP)燃料を使用する。燃料加工/再加工モジュールでMNUP燃料を製造。併設される再処理モジュールでBREST-OD-300の使用済み燃料のリサイクルを繰り返すことで、ウラン濃縮工程で生じた劣化ウランの蓄積分を処分し、放射性廃棄物の発生量と放射能レベルを低減する。濃縮工場に貯蔵されている劣化ウランを除けば、単一のサイト内でクローズド・サイクルが完成する。

MNUP燃料は、二酸化ウランベースの従来の原子燃料とは異なり、標準的技術と設備では製造できない。非標準的な燃料組成に加え、使用済み燃料から抽出したプルトニウムからの高線量被曝を防ぐため、燃料製造工程は可能な限り自動化される。MNUPの製造にはウランとプルトニウムの混合窒化物の炭素熱合成ライン、燃料ペレットの製造ライン、燃料棒の組立ライン、燃料集合体の製造ラインの4つのラインがある。施設のスタッフは250人。

燃料製造施設では20244月、ロシアの産業・原子力規制当局であるロステフナゾルからの許認可を得て、劣化ウラン窒化物燃料を用いたBREST-OD-300向けモックアップ燃料集合体を初製造するなど、製造技術の習得に取組んでいる。ロステフナゾルがプルトニウムの取扱いを承認後、MNUP燃料の生産を開始、200体のMNUP燃料集合体を製造する計画だ。すでにMNUP燃料を使用した試験用集合体は、ディミトロフグラードの原子炉科学研究所にある高速実験炉BOR-60とベロヤルスク原子力発電所3号機(高速炉BN-600)に装荷され、燃料の燃焼度合いなど、BREST-OD-300の初期炉心装荷の妥当性を確認済みである。

なお、PDECでの燃料製造支援に向け、特にBREST-OD-300初期炉心装荷やモックアップの燃料集合体の金属部品の生産拠点として、ロスアトムの燃料部門の企業群である、グラゾフのチェペツク機械工場(ウドムルト共和国)、エレクトロスタリのエレマシュ機械製造工場(モスクワ州)、ノボシビルスクの化学濃縮プラント(西シベリア)が協力している。

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