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チェコ 2040年までに原子力シェア68%へ

15 Jan 2025

大野 薫

テメリン原子力発電所 © ČEZ

チェコ政府は2024年12月20日、欧州委員会(EC)に「国家エネルギー・気候計画」(NECP)の最終文書を提出した。2033年までに電力や熱生産における石炭利用を全廃し、再生可能エネルギーとともに、原子力発電を拡大する方針を明示。原子力を、対外エネルギー依存の低減や脱炭素化戦略の重要な柱と位置付けた。

NECPは、EU加盟国が脱炭素化やエネルギー効率、再エネなどの実施計画を含む、気候変動目標と行動を詳述した文書。今回チェコ政府は、再エネの総発電電力量に占める割合を現在の約12%から2030年には31%、2050年には52%まで引き上げるとともに、原子力は、現在の約40%から2040年には68%にまでシェアを拡大させる方針を表明した。原子力の増分は、大型炉と中小型炉(SMR)の導入により賄うとしているが、まずは、既存原子力サイトのドコバニ(VVER-440、51.0万kWe×4基)とテメリン(VVER-1000、108.6万kW×2基)での増設を優先させる。

チェコ電力(ČEZ)は2024年7月、最大4基の増設プロジェクトの優先交渉者として、韓国水力・原子力(KHNP選定、今年3月末にも正式契約が調印されると見られている。現在、同プロジェクトの入札手続きについては、WE社が、韓国のAPR1000やAPR1400は同社の技術を組み込んでいると主張し、知的財産権と輸出管理をめぐってKHNPと係争中だ。こうしたなか、2025年1月9日、米エネルギー省(DOE)と韓国の産業通商資源部(MOTIE)は、昨年11月に仮調印していた、原子力輸出及び協力の原則に関する覚書(MOU)に正式調印した。今回、両国政府が、原子力輸出協力の意向を明確に示したことにより、両企業間の交渉が今後円滑に進む可能性を指摘する向きもある。

NECPはまた、石炭火力全廃後の、特に2035年以降のSMRの役割を強調、石炭火力をSMRに順次リプレースすることにより、地域暖房を含めたSMRの活用方針を打ち出した。既にČEZは、SMR初号機の建設サイトとして、テメリン・サイト南西部を選定済みで、地質調査など建設準備作業が進められている。2024年9月には、チェコ政府とČEZがSMR供給者7社の中から入札によって、英ロールス・ロイスSMR社をSMRの建設プロジェクトの優先サプライヤーに選定。SMR初号機の運転開始は2030年代半ばを予定しているが、大型原子炉の建設状況次第では、最大300万kW導入する可能性もあるという。そのほか、ČEZは、国内2基目、3基目のSMR建設候補サイトとして、チェコ北東部のポーランド国境に近いジェトマロヴィツェ(Dětmarovice)と北西部のドイツ国境付近のトゥシミツェ(Tušimice)を暫定的に指定している。両地点とも、ČEZの石炭火力サイトである。

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