カナダ オンタリオ州が新規原子力プロジェクトを模索
28 Jan 2025
オンタリオ州ポートホープ近郊のウェスリービル・サイト © OPG
オンタリオ州政府は1月15日、同州のポートホープ自治体とファースト・ネーションズからの要望に応え、州営電力のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社に、ウェスリービル(Wesleyville)サイトでの原子力発電所建設の可能性を探るよう要請した。
ウェスリービル・サイトはオンタリオ湖のほとりにある、1,300エーカー(約5.26㎢)の敷地。OPG社の前身であるオンタリオ・ハイドロ社は、1970年代後半に石油火力発電所の建設を計画したが、1979年のオイルショックと不況のためにプロジェクトは中止。OPG社は、オンタリオ州での新設需要に備え、サイトを維持していた。
ウェスリービル・サイトはすでに電源開発地に分類されており、既存の送電網、鉄道、道路インフラに近接している。OPG社の初期評価によると、サイトでは最大1,000万kWeの原子力発電所の建設が可能である。
OPG社のN. ブッチャーCEOは、「新たな原子力発電の可能性を探るにあたり、透明性を徹底したプロセスと、多くの意見する機会、ホストコミュニティとこの土地を伝統的な領土とするファースト・ネーションズ(先住民族の一部)との強力なパートナーシップの構築を約束する。関係するすべての利害関係者と権利所有者の意見に耳を傾け、彼らの明確な支援によってのみ開発を進める」と語った。
現在、原子力はオンタリオ州の電力の半分以上を供給する。オンタリオ州のS. レッチェ・エネルギー・電化相によると、オンタリオ州のエネルギー需要は2050年までに75%の増加が見込まれている。主に州の人口の急激な増加、新しい産業施設、人工知能(AI)向けデータセンター、産業の電化、電気自動車の充電エネルギーによる需要増だ。
今後OPG社はオンタリオ州とともに、自治体とファースト・ネーションズがサイト評価プロセスに参加するための必要なリソースと資金を確保。炉型を選定し、環境影響評価を実施する。新規原子力プロジェクトを進めるためには、影響評価を含む規制当局の承認を完了する必要があり、連邦政府の手続きでは数年かかる可能性があるため、早ければ2025年内に影響評価を開始する予定だ。
カナダ産業審議会は、原子力発電開発はその設計、建設、運用、保守を含む推定95年間の全期間を通じて、オンタリオ州のGDPに2,350億カナダドル(約25.4兆円)の経済効果をもたらすと試算する。また、ポートホープでの1,700人の新規雇用を含め、州全体で10,500人の雇用創出の可能性に言及。地元地域に最大20%の雇用増加を見込んでいる。
オンタリオ州政府は2024年11月、増大する電力需要を対応するためOPG社に対し、ウェスリービル・サイトを含む3つの既存のサイトについて、権利保有者および自治体側が新規の発電所開発に関心があるか評価するように要請。ウェスリービル・サイトについては、ポートホープ議会とファースト・ネーションズがOPG社と協力して新規原子力発電開発への意思を示した。OPG社は、残る2つのサイトのあるナンティコーク(Nanticoke)ならびにラムトン(Lambton)のコミュニティとも話合いを続けていくとしている。