米国 V. C. サマー発電所の増設に向けた提案を募集
31 Jan 2025
未完成のV. C. サマー2号機 原子炉格納容器構造Ⓒ South Carolina Nuclear Advisory Council
米国サウスカロライナ州営の電力会社であるサンティー・クーパー社は1月22日、同州ジェンキンズビルに建設された、バージル・C・サマー原子力発電所(PWR×1基、100.6万kW)の増設に向け提案を求めるプロセスを開始した。米国では、増大する電力需要を満たすため、新規原子力発電所に注目が集まっている。
サンティー・クーパー社は、米投資銀行のセンタービュー・パートナーズ社と協力して提案依頼書(RFP)の募集を実施。同発電所サイトで建設が中断されている2、3号機のうち1基または両機の完成、あるいは両機の代替用途の追求に関心のある企業を探している。募集締め切りは2025年5月5日。
サンティー・クーパー社のJ. ステートンCEOは、「新規の原子力発電所を稼働させるには長いリードタイムを要する。信頼性が高く、クリーンな電力を短期で供給可能な、V. C. サマー発電所の2、3号機とその関連資産のオプションを模索する好機である」と強調した。また、サンティー・クーパー社が2、3号機を所有や運転する計画はない、と明言。「RFPを通じて顧客に利益をもたらし、経済発展を支援する実行可能な利用計画を示し、サウスカロライナ州に新たな価値を提供するだろう」と期待を示した。
サンティー・クーパー社がRFPプロセスを開始することを決定した要因に、データセンターの急激な成長、先進的な製造業への投資意欲、火力発電所の閉鎖に伴う、新たな発電設備の必要性に加え、原子力発電プロジェクトの工期短縮のために、すでに運転を終了、閉鎖された原子力発電所の運転再開などへの大きな関心がある。また、アルビン・W・ボーグル原子力発電所3、4号機のウェスチングハウス(WE)社製AP1000×2基の運転開始や、税額控除や融資保証の提供を含む、原子力発電所の建設に対する連邦政府の支援制度の存在も大きい。なお、2、3号機の建設プロジェクトが中止された時点で、工事進捗率48%(2号機)であり、増設に伴う冷却水、送電インフラの準備もされており、増設には優位性がある。
建設プロジェクトの過半数(55%)を所有していたスキャナ(SCANA)社傘下のSCE&G社(2019年1月にドミニオン・エナジー社が買収)は、2、3号機(WE社製AP1000)の建設・運転一括認可(COL)を、2008年3月に米原子力規制委員会(NRC)に申請。COLは2012年3月に発給され、2013年3月に2号機、2013年11月に3号機が着工した。同炉型を採用したA. W. ボーグル3、4号機の着工とほぼ同時期である。
長年にわたる大規模でコストのかかる工事の遅延と、その後に続く2017年3月のWE社の破産申請を受け、SCE&G社は建設プロジェクトの残り45%の所有者であったサンティー・クーパー社とともに、2017年7月に2、3号機の建設中止を決定した。SCE&G社はその後、2018年12月に資産の権益をサンティー・クーパー社に譲渡している。なおNRCは、SCE&G社とサンティー・クーパー社の合意により、2019年3月にCOLを失効させた。新たに建設と運転を希望する購入者は、再申請が必要である。