原子力産業新聞

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英国 深地層処分候補地の絞り込みへ

20 Feb 2025

桜井久子

GDF完成イメージ  © NWS

英国の原子力廃止措置機関(NDA)傘下で、放射性廃棄物の地層処分の実施主体である原子力廃棄物サービス(NWS)社は130日、英国の高レベル放射性廃棄物を処分する深地層処分施設(GDF)の設置に適した場所と、設置意思のあるコミュニティを探すために、3か所の重点エリア(Areas of Focus)を特定したことを明らかにした。

重点エリアは、サイト選定プロセスのうち、調査エリア(Seach Area)に設定されている、イングランド北西端にある旧カンブリア州カンバーランド市の、①ミッドコープランドと、②サウスコープランド、イングランド東部にあるリンカンシャー州イーストリンジー市の、③テッドルソープの3か所のエリア内に特定された。なお、NWSが2023年6月から実施していたサイト評価の結果を受け、旧カンブリア州の旧アラデール市の調査エリアでは、同年9月に選定プロセスは終了している。

英国では2008年から2009年にかけて、カンブリア州の2つの自治体がGDF受け入れに関心を表明したものの、州政府の反対を受けて建設サイトの選定プロセスは2013年に白紙に戻った。英政府は201812月に策定した新たな政策に基づき、新しいGDFサイト選定プロセスを開始した。そのプロセスは、地元コミュニティとの合意ベースであることに特徴がある。まずGDFの受け入れに関心をもつ個人や団体、企業がNWSとともに作業グループ(WG)を立ち上げ、NWSとの初期協議を開始、GDF建設の潜在的適性があると思われる、調査エリアを特定する。この検討段階では地元自治体がWGに参加する必要性はないが、調査エリアでサイト評価を進めるには、同エリアに関係する地方自治体が少なくとも1つ参加する「コミュニティ・パートナーシップ」の設立が必須。調査エリアのある、上記3か所の調査エリアでは、すでに同パートナーシップが設立され、同組織がNWSとの対話や地元住民の理解促進活動を行っている。なお、英政府は同パートナーシップを構成するコミュニティに対して、経済振興や福祉の向上を目的としたプロジェクトに限り年間最大100万ポンド(約1.9億円)を提供するほか、サイト選定プロセスが深地層のボーリング調査段階まで進んだ場合には、年間最大250万ポンド(約4.8億円)を交付する奨励策を打ち出している。

NWSによると、今回、重点エリアを特定し、調査エリアを絞り込んだことで、NWSの専門家が詳細な現地調査や机上調査、土地所有者との協議を含むサイト評価のほか、その後に続く、GDFを安全かつ確実に設置できる適切な場所を検討するサイト特性調査に重点的に取組めるようになるという。

重点エリアは、地質データ、環境保護地域や市街地の検討など、さまざまな情報を用いて特定されている。NWSは、GDFに適した場所を探すために必要な3つの重要な要素として、適切な深地層の地質環境、適切な地表面の位置、地表施設と地下施設を結ぶ地下坑道の設置可能性を挙げる。現在特定されている、上記①~③の3か所の重点エリアでは、地下施設の設置エリアは共通して、領海内(沿岸から約22km)の海底下で検討されており、①と②の沖合における地下施設の設置エリアは同一である。また、①では地表面の重点エリアが2か所あるが、サイト特性調査の開始(2030年頃を予想)前には1か所とする計画である。

なおNWSは、重点エリアの特定がこれらのエリアにGDFが設置されることを意味するものではない、と強調する。建設は、適切な場所が特定され、ホストコミュニティの施設設置の意思を確認し、必要なすべての同意と許可が得られた場合にのみ開始される。

重点エリアのサイト評価後、NWSは国家の重要インフラ開発に必要な開発合意書(DCO)ならびに環境許可の申請を行う。これら許可の取得後、ボーリング調査を含む、潜在的なGDFの設計とセーフティケースの作成のために必要となる、サイト特性調査をおよそ10年をかけて実施する。2030年代後半には、地元コミュニティのGDF受入れの最終意思を確認した上で、設置サイトを最終選定し、政府に通知。2040年代初めには原子力サイト許可を含む、あらゆる同意と認可を取得、着工を計画する。2050年代には中レベル放射性廃棄物、2075年からは高レベル放射性廃棄物と使用済み燃料の搬入をしたい考えだ。GDFの建設、操業、閉鎖まで150年間を要すると見込んでいる。

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