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韓国造船企業 SMR駆動によるコンテナ船の設計を発表

21 Feb 2025

桜井久子

KSOEが発表した15,000 TEU級SMR駆動コンテナ船のイメージ図  Ⓒ HD Hyundai

韓国のHD現代グループの韓国造船海洋エンジニアリング(KSOE)社は2月12日、米国ヒューストンで開催された“New Nuclear for Maritime Houston Summit”にて、小型モジュール炉(SMR)駆動によるコンテナ船の設計モデルを初公開した。

KSOE社はこれまでに、SMRを適用した15,000 TEU[1]TEU(twenty-foot equivalent … Continue reading級コンテナ船モデルについて、米国船級協会(ABS)の基本設計承認(AIP)を取得。今回公開した設計モデルは、実際の設備や安全設計の考え方を取入れ、経済性と安全性を向上させたものだ。

原子力船は従来の船舶と異なり、エンジン排気装置や燃料タンクを必要としない。KSOE社は、これまで大型のエンジンルーム設備が占めていたスペースを最適化し、追加のコンテナを収容できるようにして経済性を向上させた。また、安全性を確保するために、ステンレス鋼と軽水による二重タンク方式の海上放射線遮蔽システムを採用し、堅牢な安全基準を確保している。

さらにKSOE社は、世界的なエネルギー技術企業である米ベーカー・ヒューズ社と協力して、超臨界二酸化炭素ベースの推進システムを採用し、既存の蒸気ベースの推進システムと比較して熱効率を約5%向上させた。この技術の導入により、原子力船の経済性と環境上の利点がさらに向上する。KSOE社は、韓国北西部の京畿道龍仁市にある未来技術試験センターに海上原子力実証施設を設立し、安全性設計の検証と試験を行う予定だ。

ABS
のP. ライアン最高技術責任者は、「原子力船は、カーボンニュートラルが台頭しつつある現在の造船市場においてゲームチェンジャーになり得る。ABSKSOE社は、世界の造船市場における海上原子力技術の商業化の加速に貢献する」と語った。海事業界では、炭素排出量を削減し、持続可能性の目標を達成するため、海事用途の原子力技術への関心と投資が高まっている。KSOEグリーンエネルギー研究所のS. パク所長は、「原子力船の商業化に必要な国際的な規制を確立するため、主要な船級協会だけでなく、国際的な規制機関との協力を強化している」「陸上のSMR製造プロジェクトをはじめとし、2030年までに海洋原子力ビジネスモデルの開発を目指す」との展望を示した。

KSOE
社は20242月から米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社と次世代SMRの共同研究を行い、関連技術の開発を加速している。同年12月には、米国ワイオミング州に建設中のテラパワー社の先進炉「Natrium」の主要機器の製造を受注した。

脚注

脚注
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TEU(twenty-foot equivalent unit20フィートコンテナ換算)。コンテナ船の積載能力やコンテナターミナルの貨物取扱数などを示すために使われる、貨物の容量のおおよそを表す単位

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