原子力産業新聞

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英国と福島の研究教育機関がロボット分野で協力

13 Mar 2025

桜井久子

MOCに調印する山崎理事長とバッキンガム理事  Ⓒ UKAEA

英国原子力公社(UKAEA)は34日、日本の福島国際研究教育機構(F-REI)とロボット分野において研究開発、人材育成等の促進を目的とする協力覚書(MOC)を締結した。廃炉分野を含む災害現場等の過酷環境での作業に貢献するロボット技術及び自律システム分野での協力関係の構築を目指す。

両者はMOCに基づき、共同研究の機会を強化、以下の分野で科学とイノベーションの推進を図るとしている。

  • ロボティクスと自律システム:原子力施設の廃止措置、過酷環境での運用、高度な製造をサポート
  • 施設管理とコラボレーション:研究施設でのベストプラクティスの共有、イノベーションと商業化の経験の活用
  • 人材とスキル:人材とスキルの開発支援の推進

MOCに調印したUKAEAR. バッキンガム理事は、「UKAEAは、日本の主要組織と強固なパートナーシップを築いており、今回のMOCはそのつながりを拡大する機会。両国が共有する経験と専門知識を活用し、政府、産業界、学界全体で両国の関与を一層強化し、現実の世界に影響を与える最先端技術を推進する」と言及。F-REIの山崎理事長は、「UKAEAの生産的な研究プログラム、教育イニシアチブ、イノベーションと商業化の経路、共同研究施設の開発における豊富な経験は、F-REIのスタートアップ目標に大変有益で貴重な教訓となるもの。本協力を通じて日本の科学技術力と産業競争力を高めていきたい」と抱負を語った。

MOCの調印式は、ロンドン郊外にあるUKAEAカラム・キャンパスで執り行われた。山崎理事長一行は、同キャンパスにあるRACE(過酷環境下での遠隔技術の適用に関する研究センター)を視察。この他、カンブリア地方にあるセラフィールド原子力関連施設の廃止措置の現場や、同地方のホワイトヘブンに所在するUKAEA等が参画するRAICo1(ロボット技術とAIの連携の研究組織)の研究施設も視察した。

UKAEAは、原子力廃止措置機関(NDA)、セラフィールド社、マンチェスター大学とともに、ロボティクス・人工知能(AI)コラボレーション(RAICo)のメンバー。同コラボは、原子炉廃止措置や核融合工学における共通の課題解決に向けたロボティクスとAIの導入加速を目的としている。また、RACE2014年設立の世界的なロボットセンターで、人間の介入が困難な極限の環境でのロボット工学の展開における研究開発の最前線にある。RACEの最近の成果では、NDA、戦略的政策研究機関のUKリサーチ&イノベーション(UKRI)、および東京電力が資金提供するLongOpsプロジェクトを通じ、廃止措置向けの次世代ロボット技術の開発に成功している。

F-REI
は、福島復興再生特別措置法に基づき、20234月に設立された特殊法人。福島をはじめ東北の復興を実現すべく、日本の科学技術力・産業競争力の強化、経済成長や国民生活の向上に貢献する、創造的復興の中核拠点を目指している。研究開発を行うだけでなく、研究成果の社会実装・産業化や人材育成についても主要な業務として取組んでいる。

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