仏オラノ ウラン濃縮工場拡張プロジェクトで欧州投資銀行から融資
17 Mar 2025
仏オラノ社は3月10日、欧州投資銀行(EIB)と、フランス南部のトリカスタン・サイトのジョルジュ・ベスⅡ(GB-Ⅱ)濃縮工場の拡張プロジェクトにおいて、投資の一部である4億ユーロ(約648億円)の融資契約を締結したと明らかにした。
この融資は、顧客からの高まる濃縮役務への需要に対応するため、オラノ社がGB-Ⅱ工場のウラン濃縮能力を30%増強するために行っている約17億ユーロ(約2,756億円)の総投資の一部を賄うもの。EIBのエネルギー部門の融資政策および欧州委員会(EC)のREPowerEUプログラムに従い、低炭素電源への移行を加速すると同時に、欧州のエネルギー主権とエネルギー安全保障を強化する欧州戦略の一環である。この融資により、欧州の電力生産の約25%、低炭素電源のほぼ半分を占める原子力発電への支援に貢献するという。
仏オラノ社は2024年10月、GB-Ⅱ工場の拡張工事の定礎式を開催した。既存の14基の遠心分離モジュールに4基を増設し、生産能力を30%以上、2,500tSWU/年規模を拡張する。オラノ社は欧州の技術を採用する設備に資金を提供し、大部分はフランスのサプライヤーを利用する。増設した遠心分離機による生産開始は2028年、フル生産は2030年の予定。GB-Ⅱ工場は2011年に遠心分離による生産を開始、2016年には7,500tSWU/年のフル生産能力に達した。なお、ジョルジュ・ベスI工場は、ガス拡散によるウラン濃縮を実施していたが、2012年に閉鎖されている。
この拡張プロジェクトは、2023年9月にユーラトム条約に基づく通知の対象となり、ECは2024年10月に肯定的な意見を発表。プロジェクトが同条約を遵守しており、欧州におけるエネルギー安全保障に貢献していると強調した。
EIBはREPowerEUプログラムの一環として、エネルギー移行を促進し、エネルギー安全保障と競争力のカギとなる、欧州の自律性の強化に向けたプロジェクトを積極的に支援している。2024年、EIBは欧州のエネルギー安全保障の強化に過去最高の310億ユーロ(約5兆円)の融資を行っている。これにより、再生可能エネルギー、送電網との相互接続、エネルギー効率とエネルギー貯蔵に合計1,000億ユーロ(約16.2兆円)以上の投資を動員することが可能になった。
オラノ社は3月6日、ウクライナの原子力発電事業者であるエネルゴアトム社と、2040年までの濃縮役務の提供に関する長期契約を締結した。同社は、ウクライナのエネルギー自立を支援し、欧州のエネルギー安全保障に貢献するという当社のコミットメントの顕れ、としている。