韓国 高レベル放射性廃棄物管理特別法を制定
18 Mar 2025
韓国国会は2月27日、高レベル放射性廃棄物管理特別法案を可決した。本特別法は、高レベル放射性廃棄物(使用済み燃料)の管理・処分方針を定めた韓国初の法律であり、高レベル放射性廃棄物を安全に管理するための施設整備とその操業に必要な事項を規定し、誘致地域などの支援策を具体化するもの。可決から15日以内に公布され、公布から半年後に施行される。
本特別法では、高レベル放射性廃棄物を管理し、管理施設の設置サイトの調査及び選定に必要な業務を行う独立機関として、国務総理(首相)の下に「高レベル放射性廃棄物管理委員会」(委員会)を設置し、高レベル放射性廃棄物の管理事業者を韓国原子力環境公団(KORAD)とすることを定めている。
同委員会は、サイト適合性調査を策定、管轄市・郡・区の申請を受けて基本調査を実施後、深地層調査の対象サイトを選定、当該サイトを対象に同調査を実施する。その結果を評価し、住民投票などを経て管理施設のサイトを最終選定することとしている。また、サイト選定前に、研究専用の地下研究所をサイト内の地下環境に建設・操業し、地質学的特性など、処分施設の安全性に係る性能を研究・実証することとなっている。なお委員会は、管理施設のサイト選定、建設及び操業などに関する許可の申請前には、安全性確保のための規制に関する事項について原子力安全委員会の意見聴取を行うことが義務化されている。同一サイト内に建設される高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵施設は2050年までに、処分施設は2060年までの操業開始をめざしている。
現在、韓国の原子力発電所の運転に伴って発生する使用済み燃料は、すべて発電所サイト内のプールや乾式貯蔵施設に一時貯蔵されている。2024年末までに合計540,924体の使用済み燃料集合体が貯蔵されており、2031年の古里原子力発電所とハンビット(霊光)原子力発電所を皮切りに、サイト内の貯蔵施設は徐々に飽和状態になると予想されている。2021年12月、閣僚級会合である原子力振興委員会で、高レベル放射性廃棄物管理基本計画(第2次)が承認されていたが、原子力産業界は、特別法の制定により計画を明確にし、サイト選定と主要課題、日程などの手続きを拘束力のある法律に詳細に盛り込む必要性を求めていた。
KORADのチョ・ソンドン会長は、「特別法が国会本会議を通過したことは、高レベル放射性廃棄物管理のための第一歩を踏み出した歴史的な出来事」とし、「KORADは国家放射性廃棄物管理専門機関として高レベル放射性廃棄物管理事業を適時に推進していく」と語った。KORADは、今回の特別法と政府の高レベル放射性廃棄物管理基本計画を基に、高レベル放射性廃棄物管理のための、①研究用の地下研究施設を活用した実証技術の適時確保、②円滑な事業推進のための人材育成、③透明で合理的なサイト選定手続きの策定、④韓国の実情に適した安全基準の策定、⑤地域住民と国民の合意形成による受容性の確保、などに尽力するとしている。