オランダ 新規原子力に向け「3炉型に設計上の不備は見当たらず」
07 Apr 2025
オランダの原子力規制当局である原子力安全・放射線防護庁(ANVS)は3月25日、海外ベンダーの3社それぞれが実施した、ボルセラ原子力発電所における2基新設の技術的実行可能性調査(THS)について、「設計上の不備はない」と暫定評価した。THSの実施は、気候政策・グリーン成長省(KGG)との契約によるもので、KGGはANVSに対し、THSに基づく安全性の観点から、オランダでの新設の実現の可否について評価するよう要請していた。
2021年12月、オランダの新連立政権は連立合意文書に原子力発電所の新設を明記。また、政府は2022年12月、新設サイトとしてボルセラ・サイトが最適と発表した。計画では、2035年までに第3世代+(プラス)の原子炉、出力100万~165万kW×2基を新設し、オランダの総発電量の9~13%を供給するとしている。現在同国の原子力シェアは、唯一稼働するボルセラ原子力発電所(PWR、51.2万kW)により、約3%を占めている。同炉は運転開始後40年目の2013年に運転期間が20年延長され、現在の運転認可は2033年まで有効である。
THSを実施したのは、米ウェスチングハウス(WE)社、フランス電力(EDF)、韓国水力・原子力(KHNP)の3社。2023年末から2024年にかけて、オランダ経済・気候政策省(EZK)(当時)とTHS実施契約を締結した。THSでは、各社の提案炉型(WE社:AP1000、EDF:EPR、韓KHNP:APR1400)が、オランダの法律および規制に準拠しているか、ボルセラ・サイト内のどの場所での設置が適しているか、必要な建設期間とコストについて調査するようKGGに依頼された。
3社は、2024年末までにTHSを完了。ANVSは、3社自身による評価を踏まえ、ANVSは、これらの設計のいずれかがオランダで認可されないと想定する理由を今のところ見出されず、現時点で安全上の理由から、いずれかの設計を入札プロセスから除外したり、そのプロセスの一環として標準設計に調整を加えることを求める理由はないと評価。今後ANVSは、国際原子力機関(IAEA)の勧告、最近の原子力法の評価、および今回の3社自身による評価の結果を受け、原子炉に関するガイドラインを最新のものに改訂する方針だ。
一方、ANVSは、これは企業自身による評価と設計に対して一般的なレビューを行ったものであり、ANVSが独自の徹底的な評価を実施してはいないため、最終的な認可発給を保証するものではないと指摘している。
なおKGGは2024年11月、米国のAmentum社を独立した第三者評価機関として選定し、3社から提出されたTHSや市場調査の結果のレビューのほか、2基の新設に係る技術的および市場的実行可能性、および、設計と資金調達に関する助言を求めている。
KGGはこれらの情報を早期から把握することで、新規建設プロジェクトの全体的なリスク軽減につながるとし、入札手続きでこれら情報を活用し、ベンダーを選定する考えだ。KGGは、5月初旬にも議会(下院)にTHSや第三者機関のレビュー結果を含め、新規建設プロジェクトについて報告を予定している。なお、第三者機関による各ベンダーとの最終協議の段階において、KHNPが選定プロセスから撤退したことを、S. ヘルマンスKGG相(副首相)が3月中旬、下院に宛てた書簡で明らかにした。これはKHNPのスウェーデン、スロベニアにおける選定プロセスからの撤退に続くものであるいう。