【第58回原産年次大会】開会セッションで三村会長が挨拶
08 Apr 2025
「第58回原産年次大会」が4月8日、東京国際フォーラム(東京・千代田区)で開幕した。国内外より約740名が参集し(オンライン参加を含む)、9日までの2日間、「原子力利用のさらなる加速 -新規建設の実現に向けて-」を基調テーマに議論する。
開会セッションの冒頭、挨拶に立った日本原子力産業協会の三村明夫会長はまず、前回年次大会以降の1年間を振り返り、「世界では原子力活用のモメンタムがますます拡大している」と、原子力利用に向けた世界的趨勢を強調。海外の動きとしては、ブリュッセルにおける史上初の「原子力に特化した首脳会議」(2024年3月)の開催や、COP28で発表された「原子力三倍化宣言」(2023年12月)の署名国が、2024年11月のCOP29で新たに6か国が加わり、計31か国に上ったことなどをあげた。さらに、世界有数の金融機関によるファイナンス支援表明、大手IT企業による同宣言を支持する動きにも言及。今回大会の議論に先鞭をつけた。
国内の動きとして、三村会長はまず、国内初の使用済み燃料中間貯蔵施設となる「リサイクル燃料備蓄センター」の事業開始(2024年11月)をあげ、「原子力発電事業に柔軟性をもたらすものであり、大きな意義を持つもの」と、原子力利用におけるバックエンド対策の重要性を示唆。再稼働に関しては、東北電力の女川2号機(2024年11月)、中国電力の島根2号機(2024年12月)の発電再開により、「再稼働したプラントは合計14基となり、待望のBWR2基の再稼働が実現したことは、大きな前進」と強調した。
エネルギー政策の関連では、2月18日の「第7次エネルギー基本計画」閣議決定をあげ、「これまでの『原子力依存度低減』に代わり、『原子力の最大限活用』が謳われたことは、私たち原子力産業界にとって極めて重要な前進」と、その意義を認識。また、今回のエネルギー基本計画での特筆事項として、「次世代革新炉の開発・設置に取り組むとして、新規建設の方針も示された。資金調達・投資回収の予見性を高める事業環境の整備や、サプライチェーンや人材の維持・強化を進めることも明記されている」ことについて、「産業界にとって大変意義深いこと」と強調した。
その上で、今大会の開催について、「新規建設の早期実現に向けた実効性ある事業環境の整備を念頭に、国内外産業界の取り組みと課題解決の方向性について議論を進める」と宣言。「新たなエネルギー基本計画のもと、原子力を持続的に最大限活用していく鍵は『新規建設』だ」と、議論に先鞭をつけた。
続く来賓挨拶では、あべ俊子文部科学大臣と竹内真二経済産業大臣政務官が登壇。それぞれ原子力分野における人づくり・教育、福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえたエネルギー政策の推進について、各行政庁としての姿勢を述べた。竹内政務官は、「特に若者に対する情報発信は不可欠だ」と強調。先に原子力産業協会と共催したサプライチェーンシンポジウムへの来場も振り返り、「サプライチェーンの課題解決に向けた取組をさらに進めていく必要がある」として、あらためて参集した原子力産業界に対し理解を求めた。
基調講演では、十倉雅和・日本経済団体連合会会長が「国民生活・経済成長を支えるエネルギー政策」と題し発表。同氏は、資本主義の弊害として「格差の拡大、固定化、再生産」、「生態系の崩壊」をあげたほか、地球の歴史から、過去10万年の気温変動を振り返り、わずか1万年の「完新世」で人類が繁栄を築きあげてきたことを説いた。同氏は、こうした科学的見地から、「地球が悲鳴を上げている。GXは最重要課題」との姿勢を示し、経団連としての提言発信など、諸活動について述べ、議論に先鞭をつけた。
この後、「バトン・スピーチ」として、グレース・スタンケ氏(コンステレーション社燃料設計エンジニア・クリーンエネルギー推進担当)、アーチー・マノハラン氏(マイクロソフト社原子力技術部長)が発表を行った。