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インド 民間の原子力セクター参入に向けて法改正の準備

18 Apr 2025

桜井久子

Ⓒ DAE

インド政府で原子力や科学技術を担当するJ. シン閣外専管大臣は、42日付の下院議会への答弁書で、原子力プロジェクトへの民間部門の参加を可能にする、原子力法ならびに原子力損害に対する民事責任法の改正を議論、提案するため、委員会が設立されたことを明らかにした。

委員会は原子力省(DAE)内に設置され、DAE、原子力規制当局(AERB)、政府系シンクタンク(NITI Aayog)、法務省(MOLJ)からのメンバーで構成される。法律改正の他、廃棄物管理、燃料調達と取扱い、廃止措置、セキュリティと保障措置の実施についても検討していく。法律の改正をめぐっては科学的問題だけではなく、省庁間協議の様々な段階を含むため、時間も掛かり、タイムラインを示すことはできないとしている。

インドのN. シタラマン財務大臣は2月、2025年度(2025年4月~2026年3月)連邦予算を発表。原子力発電設備容量を2047年までに少なくとも1kWに引き上げるとともに、2,000億ルピー(約3,500億円)を投じて小型モジュール炉(SMR)の研究開発を推進する「原子力エネルギーミッション」を開始、2033年までに少なくとも国産SMR×5基の運転開始をめざす方針を表明した。さらに、民間企業がこのセクターに参入するための大きなハードルとなっていた原子力法および原子力損害賠償法の改正を進め、民間部門との連携強化を図る考えを示していた。

シン大臣の答弁書によると、現在、バーバ原子力研究所(BARC)では以下のSMRの開発が進められている。

  • バーラト小型モジュール炉(BSMR-20020kWe):閉鎖予定の火力発電所のリプレースのほか、鉄鋼、アルミニウム、金属などのエネルギー集約型産業向けの自家発電プラント。
  • 小型モジュール炉(SMR-555.5kWe):遠隔地およびオフグリッド地域へのエネルギー供給向け。
  • 高温ガス冷却炉(HTGCR、0.5万kWth):輸送部門やプロセス産業の脱炭素化を目的とした水素製造向け。

これらのSMR初号機はDAEの所有サイトに設置され、後続炉は自家発電所や閉鎖予定の火力発電所のサイトに設置される予定だという。

一方、インド政府の野心的な原子力拡大目標と、2070年までに炭素排出量をネットゼロにするという公約の実現に向けて、電力省の管理下にあるインド最大の国営火力発電会社(NTPC)は3月末、インド政府の承認を条件として、インドにおける大型炉(PWR100kWe級)の国産化および建設に関する協力への関心表明(EOIの募集を開始している。概念設計から、エンジニアリング、調達、建設、運転開始までを一貫して協力の範囲とする。募集締切りは59日。

NTPCは、原子力分野における技術向上と国内人材の育成必要性を認識し、PWR技術の国産化を目指している。この動きは、原子力技術における自立と原子力発電所サプライチェーンの国産化という国家目標に沿ったものであり、NTPCは世界の原子力ベンダーとの協力を促進し、PWRベースの原子力発電の強固な国内サプライチェーンを確立させたい考えだ。今回のEOIによって、国内での大型炉の建設に向けてPWR技術を国産化するためのベンダーの見通しを評価し、すべての要件を満たすことに関心のあるベンダーのEOIに基づき、入札を実施する計画である。

NTPC
が目標とする発電設備容量は1,500kWe+10%。募集案内に示された協力の大枠では、提案されるPWRの主要技術のインドへの段階的な移転のほか、原子力技術の自給自足への着実な移行を確実にするために、初号機では部品の最低60%を国産化し、シリーズ建設を通じて95%以上までに増加させることが示されている。これは、提案者のインド子会社/合弁会社を通じて、またはインド企業との提携も含めることができるとしている。

また、燃料の恒久的な供給と国際原子力機関(IAEA)の保障措置下での燃料製造施設の建設にコミットするとともに、NTPC幹部の人材育成(特に運転と保守分野におけるトレーニングとスキル開発)の実施や、NTPC職員が自信を持って引き継ぐことができるようになるまで、提案者に対し、最初の5年間は原子力発電所の運転と保守を実施するよう要求している。

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