米エネ省、予算2億3千万ドルで先進的原子炉実証プログラムを開始
15 May 2020
米エネルギー省(DOE)は5月14日、国内原子力産業界による先進的原子炉設計の実証を支援するため、原子力局(NE)が担当する新しい「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」を開始すると発表した。このプログラムのために2020会計年度予算の中から2億3,000万ドルを拠出する計画だが、コスト分担方式のこの官民連携を通じて、DOEは今後5~7年以内に2つの先進的原子炉設計が実現するよう、初期建設予算として1億6,000万ドルを充当する方針である。
今回のプログラムでDOEは、2つの設計の実証炉を実際に建設するほか、先進的原子炉技術の効率的な試験・分析でアイダホ国立研究所内にある国立原子炉技術革新センター(NRIC)を活用。世界的に評価の高い国立研究所の能力を使って、これらの原子炉技術を現実化するとしている。
また、ARDPを実行に移す主要ツールとしてDOEは同日、「資金提供機会の告示(FOA)」を発出。申請者が原子炉技術の実証で支援を受けるための3つの選択肢を提示した。①は「先進的原子炉の実証」ルートで、5~7年のうちに2つの先進的原子炉が完璧に始動するよう支援。②「将来的な実証に向けたリスク削減」ルートでは対象設計を2~5件追加し、商業化を目指す期間も①より約5年延長。対象技術の実証に向けて技術面や運転面、規制面の課題を解決する。③「先進的原子炉概念2020(ARC 20)」ルートで、2030年代半ばの商業化を目指して様々な革新的設計を支援する。
DOEのD.ブルイエット長官は、「米国がエネルギー供給保障と環境の保全責務を果たす上で、次世代の原子力技術は重要なものである」と指摘。DOEの原子燃料作業部会が先月、「米国が原子力で競走上の優位性を取り戻すための戦略」で示したように、米国は次世代の原子力技術開発におけるリーダーシップを強化し、国内原子力部門の健全な成長を確保するため、技術革新と先進的原子炉技術の研究開発・実証に対する投資を推し進めねばならないと述べた。
DOEのR.バランワル原子力次官補も「先進的な原子炉技術はCO2排出量の削減で計り知れない潜在能力を発揮するだけでなく、新たな雇用を創出し強靭な経済を構築する」と説明。今回の新しいプログラムで、米国にはクリーン・エネルギーの供給と原子炉市場における機会の拡大でとてつもなく大きなチャンスが生み出されるとしている。
なお、DOEはこの前日、エネルギー高等研究計画局(ARPA-E)が実施する「知的原子力資産による発電管理(GEMINA)プログラム」の一環として、フラマトム社やGE社、モルテックス・エナジー社などが実施している先進的原子炉用のデジタル技術開発プロジェクト9件に対し、合計2,700万ドルを提供すると発表した。同プログラムでは、次世代原子炉における運転管理・保守点検(O&M)コストを10分の1まで削減するため、デジタルツイン技術(※物理世界の出来事をデジタル上に再現する技術)を開発する計画である。
(参照資料:DOEの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)