学術会議、温室効果ガス排出の大幅削減に向けたイノベーション加速で提言
22 May 2020
日本学術会議はこのほど、提言「長期の温室効果ガス大幅排出削減に向けたイノベーションの加速」を発表した。
温室効果ガス低排出型の経済・社会発展に向け、2019年6月に政府は「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を策定し国連に提出。また、学術会議は同月に世界レベルでの温室効果ガス排出の大幅削減に向けたイノベーションの役割について話し合うシンポジウムを開催したほか、9月には地球温暖化の取組に関する緊急メッセージを発出し「将来世代のための新しい経済・社会システムへの変革が早急に必要」などと警鐘を鳴らした。
今回発表の提言では、主に「安定的なエネルギー・気候変動政策の確立」、「低炭素、脱炭素を実現するエネルギーインフラの投資の予見性の向上」、「電力化率向上と電源の炭素化、脱炭素化の加速、再エネの課題認識と取組」、「基礎的な研究に重きを置いたイノベーションの誘発」、「長期的な視点を踏まえた費用対効果の検証と基礎研究の充実」に関する対応を国内の関係行政機関に要望。
その中で、「エネルギー・気候変動対策を促進するために、政府が果たすべき役割は大きい」とした上で、原子力発電、太陽光発電、風力発電など、エネルギー技術や低炭素・脱炭素技術の開発・普及におけるこれまでの政府による取組に一定の評価を示しつつ、さらなるイノベーション促進に向けて、重要性の高い研究開発、実証・導入支援に予算を大幅投入すべきとしている。
また、社会イノベーションの重要性にも言及。政府、地方、産業界、消費者らによる一体的取組を求めたほか、エネルギーに関する総合的な教育の充実化に「早急かつ強力に取り組むべき」と強調した。
一般的に低炭素化・脱炭素化対策は設備費が大きいことから、エネルギーインフラ投資に関わる海外の事例として、英国のヒンクリーポイントC原子力発電所(HPC)で採用されたFIT-CfD制度(Feed-in Tariff with Contracts for Difference、差額精算方式の固定価格買取制度)をあげ、予見性の高い市場設計を図る制度が構築されるべきなどとしている。