EDFエナジー社、英サイズウェルC原子力発電所の建設に向け開発合意書を申請
28 May 2020
SZC発電所の完成予想図 ©EDFエナジー社
仏国資本のEDFエナジー社は5月27日、英国南東部のサフォーク州でフラマトム社製・欧州加圧水型炉(163万kWのPWR)2基から成るサイズウェルC原子力発電所(SZC)を建設するため、「開発合意書(DCO)」の申請書を計画審査庁(PI)に提出したと発表した。完成すれば、SZC発電所は600万戸の世帯に低炭素で常時利用可能な電力を供給、再生可能エネルギー源との連携によりその利用を一層効果的に拡大するとともに、エネルギー輸入量を削減して英国の国家としての復活力を強化するとしている。
DCOは「国家的に重要なインフラプロジェクト(NSIP)」に対し取得が義務付けられているもので、コミュニティ・地方自治省の政策執行機関であるPIが審査を担当。審査の完了後は、PIの勧告を受けてビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)がDCOの発給について最終判断を下すことになる。
EDFエナジー社は同プロジェクトを政府に提案するにあたり、2012年以降すでに4回、公開協議を実施した。それらを踏まえたDCO申請書の提出は当初、今年3月に予定していたが、新型コロナウイルスによる感染の世界的拡大(パンデミック)という異常事態を受け、約2か月間提出を見合わせていた。PIは今後、最大28日間にわたり申請書が完全なものであるか点検を行う。受理した後はこれを公開、地元の自治体など同計画に関心を持つ英国民が自らを利害関係者としてPIに登録し、申請書に対する意見書を提出できるよう審査前の予備期間を延長する見通し。EDFエナジー社は、全面的な審査は今年の秋以降になると予想している。
この建設プロジェクトについて同社は、パンデミック後の英国経済を大規模に活性化し、発電所の建設期間中に約2万5千名分の雇用機会と1千名分の企業実習機会をもたらすと説明。イングランド地方東部の若者が雇用のための訓練を受けて高賃金の仕事を長期的に確保できるほか、発電所の運転開始後もサフォーク州で900名の人々が高度な技術を必要とする業務で雇用されるとしている。
同社はさらに、同プロジェクトでは総工費の最大70%までが英国企業に支払われると表明。サマセット州で建設中のヒンクリーポイントC発電所(HPC)とほぼ同型設計を採用予定であるため、建設コストの大幅な削減やリスクの軽減といった利点が期待できるとした。また、この関連で英国政府は昨年7月、新規原子力発電所建設プロジェクトの資金調達モデルとして検討している「規制資産ベース(RAB)モデル」について、実行可能性評価の結果を公表した。現在、これについて一般から募集したコメントを分析中であるが、同モデルでは発電所の建設段階から出資者が一定のリターンを受け取れるため、民間から資金調達する際の発生コストを抑えられる可能性がある。これにより電気料金も削減され、消費者や納税者は支払う金額に見合った価値を最大限に拡大できると結論づけている。
EDFエナジー社が英国で建設中のHPC発電所、およびこれから建設するSZC発電所とエセックス州のブラッドウェルB原子力発電所(BRB)に関しては、2015年10月に同社と中国広核集団有限公司(CGN)が交わした覚書に基づき、CGNはHPC発電所総工費の33.5%を投資すると約束。CGNはSZC発電所については20%出資するほか、BRB発電所では中国が輸出用の第3世代設計と位置付ける100万kW級のPWR「華龍一号」を採用することになっている。
(参照資料:EDFエナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)