カナダのダーリントン2号機が約3年半の改修工事終え運転再開
08 Jun 2020
ダーリントン原子力発電所 ©OPG社
カナダのオンタリオ州営電力(OPG)会社は6月4日、州内で保有するダーリントン原子力発電所の2号機(93.4万kWの加圧重水炉)で約3年半に及んだ大掛かりな改修工事が完了し、オンタリオ州の送電グリッドに定格出力で再接続したと発表した。
同炉は1990年10月に営業運転を開始しており、今回の改修工事は約10年間の計画準備段階を経て2016年10月から開始していたもの。安全で高品質の作業を成功裏に終えた同炉は、今後30年以上にわたってクリーンで信頼性の高い低炭素電力を同州に供給するとしている。
ダーリントン発電所は同出力のカナダ型加圧重水炉(CANDU炉)×4基で構成されており、約128億カナダドル(約1兆440億円)をかけた改修プロジェクトでは、同発電所で最初に営業運転を開始した2号機から作業を開始した。OPG社はこれに続いて、新型コロナウイルスによる感染拡大のため今年5月から予定していた3号機の改修工事を今年の第3四半期に始めるほか、1号機と4号機の作業をそれぞれ2022年と2023年から実施。2026年末までにこれら4基すべての改修工事を予算内で完了し、それぞれの運転期間を30年間延長する計画である。
カナダでは一時期、ダーリントン発電所で新規の原子炉を2基、同じくOPG社の所有でブルース・パワー社が操業するブルース原子力発電所(80万kW級CANDU炉×8基)では4基増設する計画が進められていたが、これらの計画は現在すべて中止されている。また、2つの新規立地点における新設計画も中止になっており、その代わりとして、世界でも最大級の複数ユニットが稼働するブルースとダーリントンの両発電所で、運転期間の延長に向けた大規模な改修プロジェクトが進められている。
2号機の改修作業ではまず、原子燃料を取り出した後に原子炉を一旦分解。その後、カランドリア管や燃料チャンネル、フィーダー管などを再設置する作業が行われた。複雑な工程であることから、OPG社はダーリントン・エネルギー複合施設のモックアップ設備や訓練設備を使って予行演習を実施。作業チームは76万時間を超える綿密で厳しい実地訓練を事前に受け、作業効率を改善した。また、オンタリオ州内の製造業者数百社が納入した精密機器や革新的な技術を用いることで、2号機の改修工事を成功に導いたとしている。
OPG社でこのプロジェクトを担当するD.レイナー上級副社長は、「最良の条件が整ったとしても、これらの作業は非常に骨の折れるものになるはずだった」と説明。新型コロナウイルスによる感染の拡大など、様々な課題や制約があるなかで最終段階の作業を終えられたことは、原子力の専門家である作業チームが同プロジェクトで役割を全うした証であると強調している。
(参照資料:OPG社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)