原子力学会、小学校の社会科・理科の教科書について調査し提言
06 Jul 2020
日本原子力学会はこのほど、小学校で使用されている社会科と理科の教科書のエネルギー・原子力関連の記述について調査し提言をまとめた。
2009、11年に続く今回の同学会による小学校教科書調査では、新学習指導要領(2017年改訂)に基づいて編集され文部科学省の検定を受けた社会科14点(3~6年、上下巻などの分冊も含む)、理科24点(同)のうち、エネルギー資源や発電、原子力関連の記述が、社会科6点、理科6点で確認されたとしている。その上で、(1)資源・エネルギーについてわかりやすく、(2)日本の電力の状況について定量的に、(3)原子力発電の仕組みについても丁寧に、(4)原子力発電の特徴についてわかりやすく、(5)福島第一原子力発電所事故について適切に――説明を望むと提言。
例えば、一部の社会科教科書で、日本における発電方式別(火力、水力、原子力)の発電量・比率をグラフで示しているものや、電力に関する単位(kW 、kWh)についても説明しているものがあり、他の教科書でも「積極的に取り扱われることを提言」などと推奨。また、資源・エネルギーについて考えさせる際、「S+3E」の観点について、「安全である」、「安定して利用できる」、「環境への影響(地球温暖化)が小さい」、「費用を抑えられる」などと、わかりやすく図示することを提言している。
学習指導要領では6年の理科で発電について扱うこととなっているが、火力については、理科教科書6点いずれも「化石燃料を燃やして、その熱で蒸気を発生させ、タービンを回して発電機で電気を起こす」といった説明・図があるものの、原子力に関しては3点に記述がなく、「ウランを燃料とする。蒸気を発生させるまでの手段が異なるだけ」という火力との相違点を理解させるようと並列して示すべきと提言。原子力発電の特徴を箇条書きしたわかりやすい例としては、「少ない燃料で多くの電気を作ることができる」、「発電の時に二酸化炭素を出さない」、「燃料や廃棄物の扱いが難しく、安全のための十分な備えが必要になる」、「事故などで有害な物質が放出されると、広い範囲に長く影響を及ぼすことがある」などと、説明している社会科教科書(4年)があった。
福島第一原子力発電所事故については、「津波の影響で電気の供給が止まり、原子炉を冷やすことができなくなった」発生原因、放射性物質や風評被害に関し適切に説明すべきと提言。福島の復興に関しては、避難指示区域の解除や富岡町の「桜まつり」復活を取り上げている社会科教科書(6年)があった。