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ウクライナで建設工事停止中の2基の完成に向けWH社が支援提供を提案

11 Sep 2020

1、2号機が稼働中のフメルニツキ原子力発電所
©エネルゴアトム社

ウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社の9月7日付け発表によると、同国西部のフメルニツキ原子力発電所で建設工事が中断している3、4号機(K3/K4)(各100万kW級のロシア型PWR)の完成に向け、ウェスチングハウス(WH)社が支援提供する可能性が出てきた。

今月3日と4日の両日、ウエスチングハウス・エレクトリック・スウェーデン社のA.ダグ社長はウクライナの首都キエフにあるエネルゴアトム社を訪問した。ウエスチングハウス社はウクライナの原子力発電所に原子燃料等の供給を行っており、両社間のそうした協力関係を一層強化するための協議をP.コティン総裁代理と行ったもの。その際、同社長はK3/K4の建設計画に関して「燃料を供給するだけでなく、自動プロセス制御システム(APCS)やその他の機器を提供する用意がある」と明言、同社は原則的に、エネルゴアトム社が同計画で必要とするすべてのことに対応可能だと表明している。

K3の建設工事は1985年9月に、K4は1986年6月に始まったものの、チェルノブイリ事故の発生により建設工事は1990年に進捗率がそれぞれ75%と28%の段階で停止した。しかし、国内の電力不足と原子力に対する国民の不安が改善されたことを受けて、ウクライナ政府は2008年に両炉を完成させるための国際入札を実施。資金援助を条件に、ロシアのアトムストロイエクスポルト社を選定した。

その後、政府に対する抗議活動が頻発するようになり、2014年に親ロシア派のV.ヤヌコビッチ政権が崩壊。クリミア半島の帰属問題や天然ガス紛争の発生によりロシアとの関係が悪化していき、A.ヤツェニュク首相は2015年、ロシアへのエネルギー依存を軽減するためK3/K4建設計画でロシアと結んだ協定の取り消しを決めた。2016年9月になるとエネルゴアトム社が、韓国水力・原子力会社(KHNP)との協力により両炉を完成させると発表する一方、機器のサプライヤーとしては欧州企業を検討中であることを同年11月に明らかにしていた。

WH社がウクライナの原子力市場に参入したのは1994年のことで、同社は現在、ウクライナで稼働する商業炉15基のうち6基に対して核燃料を供給中。このうち3基は、全炉心に同社製の燃料集合体が装荷されており、WHスウェーデン社のダグ社長は今回、「2025年までに当社製の燃料のみで稼働する原子炉の基数はさらに増える」と述べている。

ダグ社長はまた、燃料の供給以外にもWHスウェーデン社がエネルゴアトム社に協力できる分野は数多く存在すると考えており、その中でもとりわけ有望なのがK3/K4建設計画。同社長は「世界の一般的なエネルギー業界にとっても、またウクライナの将来的なエネルギー・ミックスの中でも特に、原子力が重要な要素であり続けることは間違いない」と指摘した。ただし、ウクライナの原子力発電所では経年化が次第に進んでいるため、「ウクライナで今後も原子力発電を維持できるよう、十分な準備期間の確保が必要なことを肝に銘じておかねばならないし、発電設備の更新は今、直ちに取り組まねばならない問題だ」と強調している。

(参照資料:エネルゴアトム社の発表資料(ロシア語)、原産新聞・海外ニュース、ほか)

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