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WH社、事故耐性燃料の試験用燃料集合体を初めて欧州の商業炉に装荷 

14 Sep 2020

ドール原子力発電所 ©エレクトラベル社

米国のウェスチングハウス(WH)社は9月8日、スペインのウラン公社(ENUSA)と協力して開発している事故耐性燃料(ATF)「EnCore」を欧州の商業炉としては初めて、ベルギーのドール原子力発電所4号機(PWR、109万kW)に装荷したと発表した。

ENUSAは2018年5月、WH社が進めているEnCore燃料開発プログラムに協力することで同意、ドール4号機に装荷した試験用燃料集合体(LTA)は、この協力枠組の下で両社が製造・納入したものである。両社製のLTAはすでに2019年春、米エクセロン社がイリノイ州で操業するバイロン原子力発電所2号機(121万kWのPWR)に初装荷されており、WH 社はEnCore燃料の市場を拡大して世界中に普及させるという目標の達成に向け、ドール4号機への装荷は大きな節目になったと評価している。

WH社のATF開発は、米エネルギー省(DOE)の関係プログラムの下で行われているが、これは福島第一原子力発電所事故が発生した後、軽水炉燃料で事故耐性を強化する必要性が注目されたことによる。議会は2012年会計年度からDOEの燃料・被覆材プログラムでATF開発に予算措置を講じており、産官学が連携して2022年までに商業炉への先行燃料集合体の装荷を目指している。産業界からはWH社のほかにGE社とフラマトム社の3グループが協力しており、WH社がDOEから交付された補助金は9,300万ドル以上にのぼっている。

WH社の複数のEnCoreブランドATFは、過酷事故が発生した際の厳しい条件に耐えて設計ベースの安全裕度を向上させることや、長期の燃料サイクルを実現して燃料経済の改善を図ることなどを目的としている。コンセプトとしては、融点が非常に高く水と水蒸気の反応を最小限に抑えられる炭化ケイ素を被覆管に用いる方法や、ジルコニウム合金製の被覆管にクロムをコーティングし、ジルコニウムと蒸気の反応を抑える方法などを開発中。

ENUSAとの協力では、WH社が二酸化ウランの粉末や先進的な被覆技術を駆使した機器を提供する一方、ENUSAは二酸化ウランでペレットを製造し燃料集合体を供給している。ENUSAの担当理事は、「両社の能力によってATF開発プログラムが現実のものとなり、燃料の発注を受けてから装荷までのリードタイムが削減可能であることが実証された」と述べている。

(参照資料:WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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