IAEA、原子力分野における女性の登用拡大を目指し奨学金制度開始
15 Sep 2020
©IAEA
国際原子力機関(IAEA)はこのほど、原子力科学技術や原子力安全・セキュリティ、および核不拡散分野における女性の登用者数の拡大を図るため、新たに設置した奨学金制度「マリー・スクロドフスカ・キュリー奨学金プログラム(MSCFP)」で、これら分野の修士課程に在籍する女子学生からの申請書の受付を開始した。
これは原子力分野で優秀な若い女性の育成を促進し、将来的に男女双方を含めた人材を確保するためのもの。応募者の中から年間100名を選抜し、学費として年に最大1万ユーロ(約126万円)、生活費の補助としてさらに1万ユーロを最長で2年間給付。初回となる今回の応募締め切りは、10月11日となっている。
同プログラムは、物理学分野と化学分野でノーベル賞を2回受賞した先駆的物理学者「キュリー夫人」に因んで名づけられ、今年3月に設置が決定していた。その際、キュリー夫人の孫娘にあたる原子力物理学者のH.ランジュバン・ジョリオ博士がIAEAにビデオメッセージを寄せ、「科学において女性は男性と同等の能力を持つと祖母は心の底から信じていました。彼女なら、科学分野で女性の地位が今よりはるかに早く確立されることを望んだことでしょう」と抱負を託している。
優秀な人材は原子力科学技術の発展に欠かせないだけでなく、生産性の拡大や技術革新を促す上で非常に重要であるとIAEAは認識。近代的な社会の経済成長や革新的技術開発においては、STEM(科学・技術・工学・数学)分野の能力をもった人材が今まで以上に必要とされている。
キュリー夫人は放射性元素の発見と活用で数え切れない恩恵を人類にもたらしたが、後続の女性科学者たちも原子力科学技術の分野ではこれまでに素晴らしい業績や科学的発見を残している。このためIAEAは同夫人の名を冠したプログラムを通じて、原子力部門に根強い男女間の雇用格差を埋めていく方針である。
この部門の女性専門家は未だに少数派で、女性がSTEM分野に入って研究を続けるには学生時代から多くの障害に直面する。IAEAの奨学金プログラムは、女性が出来るだけ数多く、世界中で原子力科学技術や安全・セキュリティ分野の教育を受け研究を続けられるよう支援を提供。関連する訓練コースやワークショップ、奨学金制度、科学関連の視察、地域の原子力教育ネットワークにも参加を促し、安全・セキュリティ分野を含む国レベル、世界レベルの原子力プログラムで男女間の機会均等化促進を目的としている。
(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)