仏EDFらの原子炉デジタルツイン構築計画にフラマトム社が参加
25 Sep 2020
©フラマトム社
仏国のフラマトム社は9月22日、仏国内ですべての商業炉を所有・運転するフランス電力(EDF)グループと政府の研究開発機関である原子力・代替エネルギー庁(CEA)、および同国の原子力産業界や学術界に属する6つの企業・組織が共同で進める「原子炉のデジタルツイン構築に向けた研究開発プロジェクト(PSPC)」に、同社が新たに加わると発表した。
デジタルツインは現実世界に存在する製造設備の情報や運転データ、環境データなどを収集し、サイバー空間上にまったく同じ状態・状況を再構築する技術。設備に不具合が発生した際、サイバー空間にあるこの「仮想モデル(クローン)」の設備を分析して原因を究明するなど、高度なシミュレーションを実行することが可能になる。
4年計画で実施される同プロジェクトでは、パリの南西約25km地点にあるEDFのパリ・サクレー研究所に本部を置く方針。原子炉物理分野におけるCEAの科学的統率力とEDFが原子力発電所の設計と運転について保有する知識、およびフラマトム社が原子炉の設計エンジニアリングとサービスで蓄積した専門的知見を統合することになる。これらの組織から100名以上の専門家が協力し、仏国内にある各原子炉のクローンをデジタル技術で構築。これらのクローンは若い世代の原子炉運転員の訓練用シミュレーターとして機能するほか、エンジニアリング学習に必要なシミュレーション環境を提供する。
このプロジェクトはまた、2019年1月に原子力関係企業などで構成される原子力産業戦略委員会(CSFN)と当時の環境連帯移行大臣、および経済・財務大臣が締結した4分野の「戦略協定」に直接貢献する内容となっている。4分野のうちの1つは「原子力産業のデジタル改革」であり、仏国の原子力産業界が収益面でハイリスク・ハイリターンのプロジェクトで成功を納められるよう、デジタル技術を通じて技術革新に向けた道筋を確立し、仏国原子力部門の技術や専門知識が維持・発展されるよう保証することが目的。フラマトム社らは国内にある原子炉それぞれの設計や改修部分に合わせて、デジタルツインを発展させる計画である。
今回のプロジェクトについてフラマトム社の担当理事は、「経験豊富で卓越した産業界のリーダーや学術界のパートナーとの協力により、世界中の顧客のために新たなエンジニアリング・サービスが展開される」とコメント。同プロジェクトを通じてフラマトム社の社員もさらに技能を高め、安全でクリーンかつ信頼性の高い発電をする上で同社に不足しているデジタル技術を長期的に補完していきたいと述べた。
(参照資料:フラマトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)